たかがレモン、されどレモン 南仏の町に高齢者が集まる不思議

南仏マントンのレモンは、大きく黄色く香りが良い


僕は食材のルーツや歴史を遡るのが好きなのですが、レモンにはイギリス海軍をサポートしたと言われる歴史があります。

15〜18世紀、人類が大西洋やインド洋、太平洋を横断した大航海時代には、ビタミンC不足を原因とする壊血病(かいけつびょう)が大流行しました。船上では乾物や塩漬けなどの保存食しかなく、長期間、新鮮な野菜や果物を摂取できなかったからです。

壊血病になると、最初のうちは小さな血豆ができ、次第に大きな腫瘍になっていきます。歯茎が黒くなったり、骨折した場所がまた再発して折れたり、古傷が開いたりします。ビタミンC不足で、細胞をつなぐコラーゲンを体内で生成できないからです。体に限らず、脳も酸化ストレスを引き起こし、神経伝達物質の働きを阻害するため、幻覚を見たり、抑うつ状態になるなど、精神障害も引き起こします。

別名「大航海の病」とも言われるこの病にいち早く気づき、対応したのがイギリスでした。予防や対策ができたことで、イギリスは兵力が衰えることなく、制海権を得て植民地を降参させることができた言われています。



船上のような過酷な環境ではないものの、精神障害やうつ、心の不調などは、現代社会にも通じる問題です。たかがレモン、されどレモン。時代は変われど、「食」を通じて体内から体を整えていくことがより求められているように思います。

連載:喰い改めよ!!
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文=松嶋啓介

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