台湾は、EUと自由貿易協定を結びたい考えだが、経済力を増す中国の圧力が妨げとなっている。中国は、台湾を自国の一部と考えて外交権を認めておらず、他国に対して台湾と交渉しないよう圧力をかけている。
台湾とEUの新たな貿易協定では、エイサーやMSIなどのコンシューマ・エレクトロニクス大手のほか、自転車メーカーの「ジャイアント(Giant)」や金融サービス企業が恩恵を受けると予想される。
「台湾の企業は、他国の企業と同じように多角化を求めている」と台北本拠のシンクタンク「Polaris Research Institute」のLiang Kuo-yuan社長は話す。
台湾の投資審議委員会のデータによると、昨年ヨーロッパで承認された案件の89%は投資資産のバイヤーなど、金融会社によるものだったという。例えば、昨年12月には1110億ドルの資産を保有する生命保険大手の「Fubon Life Insurance(富邦人寿保険)」は、フランクフルトの高層ビルを6億5900万ドルで買収した。
その前月には、「Taiwan Life Insurance(台湾人寿保険)」が486億ドルの投資資産のうち、5660万ドルをマッコーリーのインフラファンドに振り分けると発表した。
昨年、台湾によるEU投資の6.6%が製造業によるもので、その大部分を家具や自動車、コンシューマ・エレクトロニクスが占めた。PCベンダーのMSIやエイサー、エイスースはいずれもフランスで事業を運営している。
また、自転車メーカーのジャイアントやメリダ(Merida)、半導体分野ではTSMCやペガトロンもオランダに事業所を設置している。
中国による妨害には慣れている
「テックセクター全般と半導体業界は、EUとの投資協定で大きな利益を得るだろう。自動車業界は特にメリットが大きい。自動運転車やEVへのシフトにより、電子部品の需要がさらに高まるからだ」とアナリストは話す。
欧州委員会は、2016年にウェブサイト上で台湾との協定について、「マーケットへのアクセスに対して包括的なアプローチを取る」とコメントしている。Liangによると、協定によって台湾企業は販売チャネルの開拓やマーケティングがしやすくなるという。
台湾外交部の広報担当者であるAndrew Leeは、2月21日に行われた記者会見で、「外交部や経済部は、協定を締結するために全力を尽くしている」と述べた。
台湾もEUも、中国による妨害の可能性を否定していないが、いずれもそれによって交渉が停止することはないとしている。欧州委員会の東アジア貿易の担当者は今月、「外交面では台湾よりも中国を重視しつつも、台湾との協定締結はあり得る」と述べた。
「我々は国際的なプロジェクトを宣伝するたびに、中国の妨害にあうことを覚悟しており、これらの障害を排除する方法を探し出す」とLeeは語った。