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2019.03.19

元AnyPayのCEOの次なる舞台は「アートxブロックチェーン」のスタートバーン。3.1億円の資金調達も

「わりかんアプリpaymo」で話題をさらったAnyPay社。そこでCEOを務めていた大野紗和子氏の新天地が決まった。

彼女の新たな挑戦の場、それは「アートxブロックチェーン」で世界のアート業界の変革を目指す、スタートバーン株式会社だった。大野氏のCOO就任と時を同じくして、UTEC(東京大学エッジキャピタル)、SXキャピタル、電通、片山龍太郎氏などを引受先とした第三者割当増資による総額3.1億円の資金調達も発表した。

新時代のアート作品評価・流通インフラの構築を目指す

そもそも、「アートxブロックチェーン」とは何か?と思った読者の方も多いだろう。改めて、スタートバーンの事業についてご紹介しよう。

スタートバーンはアーティストが報われる社会の実現に向けて、「アートxブロックチェーン」による新時代のアート作品評価・流通インフラ構築の事業を展開。2018年10月のStartbahn.org へのブロックチェーン証明書発行サービス実装など進めていた。

ちなみに、アート市場は、セカンダリー市場(いわゆる中古)がもっとも盛り上がるという面白い特徴を持つ。しかも、アートは時間を重ねて価値が上がるケースが多い。

アーティストのキャリア形成に、作品のコレクション履歴や歴史的背景や批評によりがその価値を底上げしていくのだ。没後にようやく評価されたゴッホはそのわかりやすい例だろう。

ただ、没後に限らず、一次販売以降のコレクターは潤ってもアーティストの懐には一切の還元がない。オークションなどでn次販売されるたびに価値が上がっていっても、作品を手放した後は一銭も身入りがないのである。これでは、若手アーティストは育ちにくいし、市場は活性化しない。



そこでスタートバーンはブロックチェーンネットワークを活用し、アーティストの各作品に証明書を発行。作品のタイトルやサイズ、制作年度、作者情報、来歴情報などのデータをブロックチェーン上に記録し、他のアート関連サービスや機関と共有可能にしようとしているのだ。

これにより、アーティストの作品の来歴を追い続けることができ、例えば二次販売、三次販売、四次販売とすべてのタイミングで、アーティストに還元することも可能になる。もちろん、還元金を望まないアーティストは外すことも可能だ。

別室に投資家もスタンバイ。「絶対に、彼女に入って欲しかった」

今回、大野氏から直接話を伺うことができたのだが、前職を退任後、起業も検討していたという。そんな中、共通の知人を介して、2018年の12月19日に対面を果たした。

大野「元は全く違うビジネスでの起業を検討していました、ブロックチェーンという軸は外さずに。海外ではブロックチェーンが仮想通貨以外の金融インフラとして認識されはじめていますが、日本ではまだまだ。中央集権ではない世界の実現にも興味はあったのですが、それよりもエモーショナルな分野にチャレンジしたいなと。

もともと、スタートバーンの事業は知っていたのですが、ブロックチェーンとエモーショナルな部分の掛け算は面白く、かつ魅力的。社会的な価値のある事業をより多くの人に認知してもらうためにも、施井さんと共に働きたいなと」

施井「大野さんのことはもちろん存じており、ちょうど、BizDevをリードしてくれる人材を求めていました。詳しくはお話しできませんが、当時起業を考えていた彼女の事業アイデアがスタートバーンの理想にも近く、彼女こそ求めていた人材にふさわしいと。

ジョインが決まるか決まらないかの最後のMTGの際は、UTEC(東京大学エッジキャピタル)の方が近くにスタンバイしており、『いつでも呼んで!』と。彼が登場することなく無事に話がまとまったのはいい思い出です(笑)」

“カネボウ再建”の立役者も、社外取締役に就任

大野氏の就任だけでも大きなニュースだが、今回、スタートバーンが3.1億円の資金調達をしたことも忘れてはならない。

施井「ブロックチェーンでマネタイズのスピード感は正直、まだわかりません。このタイミングで国内の大手企業数社とPoCプロジェクト(​新しい概念や理論、原理などが実現可能であることを示すための簡易な試行。一通り全体を作り上げるプロトタイプの前段階​)もスタートさせ、収益基盤を築いていこうと考えています。

また、今回調達した資金はブロックチェーンネットワーク・接続ASP開発の加速、事業提携・共同事業を含めた国内外のビジネス展開、知財戦略やプロダクトマネージャー、アートディレクターなどの採用強化などに活用する予定です」

社外取締役にはカネボウ再建人でもあり、世界最古のオークションハウスのクリスティーズジャパンの元代表の片山竜太郎氏が就任。スタートバーンの飛躍にとって、最高のタイミングで最高のスタッフが集結した、といっても過言ではないだろう。

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