米史上最大の裏口入学スキャンダル 問われる子育てのあり方

ロリ・ロックリン(左)、フェリシティ・ハフマン(右)(Gettyimages)


米国ではつい数カ月前にも、子どもの経歴詐称疑惑が報じられていた。米紙ニューヨーク・タイムズは昨年末、ある進学校が生徒を一流校に入学させるため、成績証明書やクラブ活動記録、さらには悲劇的な経験談を日常的に捏造していたと報じた。

この件で私が最も残念に思うのは、学業的にも感情的にも他の学生についていく準備ができないまま入学した生徒たちだ。その多くは、学校が行っていた不正について認知していなかった。同紙によると、ある学生は、授業についていけなかったものの、「友達にそれを伝えると『どうして入学できたの?』と聞かれるから打ち明けることができなかった。答えられない質問ばかりだった」と語った。

私は大学入学コンサルティング企業の経営者として、親の行動のせいで精神的・感情的なダメージを受ける子どもや、平等な選考が行われていたら志望校に入学できたかもしれない子どもら、このスキャンダルで傷つけられた全ての生徒のことを思い、怒りを感じている。

検察当局は記者会見で、学生側はあえて訴追しなかったと説明した。学生の関与のレベルは、全く関知していなかったケースから、完全に関与していたケースまで、さまざまであったとされる。これからは、自分の子どもには能力が足りないと内心思っている親から、子どもを不正と詐欺に公然と巻き込み、正直さや公平さよりも地位や物質的な成功が大事なのだと思わせる親まで、さまざまな子育ての怠慢の形があることが見て取れる。

USCやエール大学に入ることは将来助けになるかもしれないが、大学が自分に合わないために自分が詐欺師であるかのように感じたり、不幸せになったりしては意味がない。

私に言わせれば、志望校のリストにアイビーリーグの名門8校全てが入っている生徒は、自分が求めるものについてしっかり考えられていない。8校はそれぞれ校風が非常に異なる。コロンビア大学で充実した大学生活を送れる学生はブラウン大学を楽しめない可能性が高いし、その逆も同じだ。

私は、今回のスキャンダルに関与した親にいくつか聞きたいことがある。“より良い”大学を卒業することは、子どもが自分の功績を誇りに思い、精神的にも感情的にも安定し、正直で、勇気があり、思いやりの心を持つことよりも重要なのだろうか? 子どもの大学のネームバリューは、充実した大学生活や、自己実現、スキルや関心、知的好奇心の完全な追求よりも、真に大事なことなのだろうか?

編集=遠藤宗生

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