多様性とフェアネス


一方で、力強く施策を推し進めてきたことで成果を感じている担当者の話も聞くことができた。

「ここ2年ほどで、就業規則に差別禁止を明記したり、管理職研修をしたり、全社でe-ラーニングも実施し、東京レインボープライドへの参加も進めることができました。ただ、販売店舗やグループ会社でも当事者が多く働いているとは思いますが、なかなか可視化されていません。社内文化を変えていくためにはまだまだ道のりは長いです」

他にも、「LGBT関連の施策をしたいと社長に説明しに行ったら、『そんなことをしたら子孫がいなくなるじゃないか』とワケのわからないことを言われました。こりゃダメだと思って、勝手に施策を進めはじめたら、途中から社長の態度がコロっと良い方向に変わりました」と語る担当者もいた。

ある大手企業の担当者は「今年から社内への情報発信に力を入れて、LGBT関連の施策についての社内アンケートも始めたところ約1000件の回答がありました。想定よりすごく多くて、これまで社内に『LGBTはいない』と思われていたのが『いる』という前提に変わってきているように感じます」と語った。


筆者も登壇し、LGBTに関する法整備が企業に与える影響について話した

業種も規模も不問の交流で、より効率的に施策を進める

参加していた担当者の課題感を聞いていると、1. そもそも制度改革や研修など、どこから始めるべきか、どう社内を巻き込んでいくかというハードルと、その次のステップとして、2. 特に現場を含む、社内文化の醸成を実感することに対する課題感の大きく2つのフェーズがあるように感じた。

1については、社内の当事者がカミングアウトしていても、していなくても、安心して働くためには、差別禁止の明記や福利厚生、相談窓口の設置などの制度を整え、誰でもアクセスできるようにする必要がある。一方で、2は社内の空気感が変わっていかなければ、当事者がカミングアウトすることは難しいだろう。


サミットでは、シルバーウッドが制作した職場で働くレズビアンの当事者視点を体感できるVRコンテンツを視聴するコーナーもあった

連合の調査では、「職場の人からLGBTであることをカミングアウトされた・カミングアウトしていると聞いた」と答えた人はたった7%だった。

さらに、LGBTに対するハラスメントを見聞きしたことがある人は全体の2割強だが、LGBTの当事者が身近にいる人に絞ると約6割に上っている。つまり性的指向や性自認に関するハラスメント(SOGIハラ)は無意識のうちに行われていることが多い。

制度を整えること、研修等を通じて知識を持つだけでなく、やはり当事者を身近に感じているかどうかは社内で多様性を受け入れる文化をつくる上で重要だ。


「LGBT施策は難しいことではない」と話す、OUT JAPANの屋成和昭さん

制度改革も、文化醸成も、どのような切り口でどこから進めていくかは企業によって異なるだろう。理解を広げるためには、社内で働く当事者と密にコミュニケーションを取ることが望ましいが、最初から社内でオープンにして働いている当事者と出会えるわけではない。

力強い意思を持った担当者が、手探りでLGBT関連の施策を推進してきた時期から、先行事例が横に展開していくフェーズに移行しつつあるからこそ、業種や規模を問わず、企業担当者が集い、他社事例を学び、社外の働くLGBTの声を聞く場としてLGBT-Allyサミットが活用されている。

次回が5回目となる「LGBT-Allyサミット」は、6月3日にスターバックス コーヒー ジャパンで開催予定だ。「ゴールデンウィークに行われる『東京レインボープライド』の報告を中心に共有する予定です」と屋成さんは語る。詳細が決まり次第、OUTJAPANのWEBサイト(https://www.outjapan.co.jp/)からチェックできる。

文=松岡 宗嗣

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