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2019.03.16

リストラに経費削減、中国ネット企業を襲う「景気減速」の嵐

(TPG by Getty Images)

中国の大手テック企業の間で、リストラや経費削減の動きが起きている。ゲーム大手の「NetEase」や配車サービスの「滴滴出行(Didi Chuxing)」、Eコマースの「京東(JD.com)」は景気の減速や政府の規制強化に直面し、人員削減やコストカットを進めている。

コンサルティング企業iiMediaのZhang Yiは「中国のテック企業は既存のビジネスの成長の壁に直面し、新規事業でも業績を伸ばせていない。リストラは必然の流れだ」と述べた。

北京本拠のリクルーティング企業Zhaopin.comのデータでは、中国のインターネット企業の求人件数は2018年の第4四半期に、前年同期比で20%の減少となった。アナリストらは国内景気の減速が、企業にさらなるプレッシャーを与えると見ている。

2016年にウーバーを中国市場から追放し、国民的配車サービスとなった滴滴出行は現在、全体の15%に及ぶ約2000名の人員削減を進めている。同社は社員向けの無料の軽食や、ヨガ講座を提供していたが、それも打ち切ったという。

滴滴出行では昨年、女性客がドライバーに殺害される事件が相次いで起き、当局から厳しい監視の目が向けられている。同社はその後、新たな安全性向上のための施策を導入し、海外市場への進出も進めている。

一方でゲーム大手のNetEaseは、中国政府によるゲームの承認プロセスの厳格化により、新規の発売タイトル数を大幅に減少させることになった。同社は大規模なリストラは行わないと述べているものの、広報担当者は「社内の組織再編が必要だ」と話している。

JD.comも中堅社員の10%をリストラするとの報道が流れたが、広報担当はこの件に関するコメントを控えた。中国のEコマース分野で第2位のJD.comは一方で、新規で1万5000名を採用し、顧客サービスや物流部門のオペレーションを整備すると述べている。

この分野では格安Eコマースの「Pinduoduo(拼多多)」が勢力を急拡大した結果、JD.comの新規顧客獲得率は昨年末に4%に減少し、前年同期の15%から大幅な減少となった。

ただし、中国のネット企業の全てが、リストラを進めている訳ではない。アリババCEOのDaniel Zhangは先日、「景気が悪い時こそ我々にとってはチャンスだ。新たな人材獲得を進めていく」と宣言した。

スタートアップは資金調達に苦戦

中国のインターネット企業の最大の課題は、人々の消費意欲の減退だ。中国政府は今年の経済成長率の目標を6%から6.5%のレンジに設定したが、これは過去30年間で最も低い水準だ。背景には、政府や企業の損失が膨らみ、米中の貿易摩擦によって製造業がダメージを受けたことがあげられる。

リスク回避の動きは金融セクターにも広がっている。北京の調査企業Zero2IPOのデータによると、2018年にプライベートエクイティ企業が調達した金額は1.01兆元(約16.6兆円)だったが、これは2017年から30%近い減少だった。

投資家らが先行きへの懸念を高める中で、中国の小規模なスタートアップは試練の時を迎えている。上海のGobi Partnersのアナリストは「多くのスタートアップは資金を調達できず、人員削減に乗り出した」と述べた。

中国の政治家らはこの状況に対処するため、2兆元(約33兆円)規模の企業減税策を打ち出し、銀行に私企業に対する貸し出しを増やすよう要請した。しかし、専門家からは、この施策の有効性に対する疑問の声もあがっている。

「政府の施策は一定の効果を及ぼすかもしれない。しかし、それが十分な規模であるかどうかは、議論が分かれるところだ」と北京の調査企業Gavekal DragonomicsのCui Ernanは話した。

「今年の下半期には一定の上昇が見込めるが、上半期の雇用市場はこのまま停滞が続くだろう」とErnanは話した。

翻訳・編集=上田裕資

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