コンサルティング企業iiMediaのZhang Yiは「中国のテック企業は既存のビジネスの成長の壁に直面し、新規事業でも業績を伸ばせていない。リストラは必然の流れだ」と述べた。
北京本拠のリクルーティング企業Zhaopin.comのデータでは、中国のインターネット企業の求人件数は2018年の第4四半期に、前年同期比で20%の減少となった。アナリストらは国内景気の減速が、企業にさらなるプレッシャーを与えると見ている。
2016年にウーバーを中国市場から追放し、国民的配車サービスとなった滴滴出行は現在、全体の15%に及ぶ約2000名の人員削減を進めている。同社は社員向けの無料の軽食や、ヨガ講座を提供していたが、それも打ち切ったという。
滴滴出行では昨年、女性客がドライバーに殺害される事件が相次いで起き、当局から厳しい監視の目が向けられている。同社はその後、新たな安全性向上のための施策を導入し、海外市場への進出も進めている。
一方でゲーム大手のNetEaseは、中国政府によるゲームの承認プロセスの厳格化により、新規の発売タイトル数を大幅に減少させることになった。同社は大規模なリストラは行わないと述べているものの、広報担当者は「社内の組織再編が必要だ」と話している。
JD.comも中堅社員の10%をリストラするとの報道が流れたが、広報担当はこの件に関するコメントを控えた。中国のEコマース分野で第2位のJD.comは一方で、新規で1万5000名を採用し、顧客サービスや物流部門のオペレーションを整備すると述べている。
この分野では格安Eコマースの「Pinduoduo(拼多多)」が勢力を急拡大した結果、JD.comの新規顧客獲得率は昨年末に4%に減少し、前年同期の15%から大幅な減少となった。
ただし、中国のネット企業の全てが、リストラを進めている訳ではない。アリババCEOのDaniel Zhangは先日、「景気が悪い時こそ我々にとってはチャンスだ。新たな人材獲得を進めていく」と宣言した。
スタートアップは資金調達に苦戦
中国のインターネット企業の最大の課題は、人々の消費意欲の減退だ。中国政府は今年の経済成長率の目標を6%から6.5%のレンジに設定したが、これは過去30年間で最も低い水準だ。背景には、政府や企業の損失が膨らみ、米中の貿易摩擦によって製造業がダメージを受けたことがあげられる。
リスク回避の動きは金融セクターにも広がっている。北京の調査企業Zero2IPOのデータによると、2018年にプライベートエクイティ企業が調達した金額は1.01兆元(約16.6兆円)だったが、これは2017年から30%近い減少だった。
投資家らが先行きへの懸念を高める中で、中国の小規模なスタートアップは試練の時を迎えている。上海のGobi Partnersのアナリストは「多くのスタートアップは資金を調達できず、人員削減に乗り出した」と述べた。
中国の政治家らはこの状況に対処するため、2兆元(約33兆円)規模の企業減税策を打ち出し、銀行に私企業に対する貸し出しを増やすよう要請した。しかし、専門家からは、この施策の有効性に対する疑問の声もあがっている。
「政府の施策は一定の効果を及ぼすかもしれない。しかし、それが十分な規模であるかどうかは、議論が分かれるところだ」と北京の調査企業Gavekal DragonomicsのCui Ernanは話した。
「今年の下半期には一定の上昇が見込めるが、上半期の雇用市場はこのまま停滞が続くだろう」とErnanは話した。