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2019.03.15

育成にベストプラクティスはない。人事はマネージャーをどう育てるべきなのか?

ヤフー株式会社 常務執行役員 コーポレートグループ長 本間浩輔氏 ベイン・アンド・カンパニー パートナー 石川順也氏 株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 川内正直氏

不確実性が高く、変化の激しい時代において、企業の競争力の源泉となるのが「人材」だ。優秀な人材を揃える方法は「外部からの採用」もあるが、「内部で育成する」方法もある。多くの日本企業は形式ばった研修や施策に固執するあまり、なかなか人材の育成が上手ではない。では、どのように育成を行なっていくべきか。
 
2018年8月2日に行われた「HR Committee Conference」では、「人事はマネージャーをどう育てるのか」というテーマのもと、ベイン・アンド・カンパニーの石川順也さん、ヤフー株式会社の本間浩輔さんが持論を語った。
 
■講演者
ベイン・アンド・カンパニー パートナー 石川順也さん
ヤフー株式会社 常務執行役員 コーポレートグループ長 本間浩輔さん
 
■モデレーター
株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 川内正直
 

「TIME」「TALENT」「ENERGY」の3つの観点で育成を考える
 
川内:まず、お二人に今回のテーマ「人事はマネージャーをどう育てるのか」というテーマでそれぞれのお考えをお話いただきたいと思います。組織改善クラウドの「モチベーションクラウド」では「階層間の意思疎通」の項目が最もスコアが低く、組織の階層間の結節点であるマネージャーの成長は多くの企業が抱える課題だと感じます。せひお考えをお聞かせください。
 
石川:テーマが「人事がどのようにマネージャーを育成するか」ということですが、まずは、「どのようなマネージャーを育てるか」を考える必要があります。これまで多くの日本企業が輩出してきた“特定のスキルを持ったマネージャー”ではなく「ひとの集合体である組織をしっかりとマネージする人」が必要という前提で話を進めていきたいと思います。
 
マネージャー育成を考える上では「TIME」「TALENT」「ENERGY」の3つの観点で考える必要があります。この3つは企業がマネージャーを育成する上で企業にとっては課題でもあり機会でもあります。
 

 
「TIME」とは、限られた時間の中で本当にアウトプットに集中できる柔軟な働き方を実践し、効率性を高められるようなマネージャーを育てていくこと。日本ではマネージャーが他の業務に時間を奪われているということが数値としても顕著です。マネージャーの時間を解き放ち、本当に違いを生む業務やメンバーをリードするところに配置できるような形にしていかなければ「組織生産力」は高まりません。
 
次に「TALENT」ですが、優れた人材を本当に重要な仕事に投下することが不可欠です。また、いかにそうした人材を惹きつけられるかも重要です。優れた人材は戦略的な配置が不可欠。優れた人材は優れた人材の環境で好影響を与えながら一緒に働くことでモチベーションを高く維持できることがわかっています。トップとの距離を近づけるなどの戦略的な人材の配置・ローテーションが必要でしょう。
 
最後に「ENERGY」は多様化して行く価値観の中で社員を奮い立たせるか、ということを意味しています。トップと直接対話する場を人事が意図的に作るなど、トップのコミットメントと連動した運用をして行く中で社員が力を発揮できるシーン。
 
人事は「できるだけ邪魔をしない」
 
川内:ありがとうございます。では続いて本間さんよろしくお願いします。
 
本間:はい。「人事はマネージャーを育てられるか」ということですが、直接的に育てるというよりも人事が担うべき役割は「リーダーが育つような土壌を作ること」が現実的ではないかと考えます。それは石川さんがおっしゃられた適切な「人材配置」という部分では同じです。マネジャーを育成する段階で適切な倫理観を持った環境で育てていくということは必要だと思います。
 
具体的な人事の施策をあげると、私がヤフーで人事の責任者になった際には「人材開発会議」という会議を実施しました。これは、人材を育てていくにあたり、現在の上長と周囲の上長、もしくは推薦者が集まって「この人にはどんな良い所があって、どんな課題があって、これからどんな経験をデザインしていけばいいのか」を全員で話し合う場です。決して“良い奴”だとか“頑張り屋”という評価ではなく、徹底確認力が高いとか、情報思考性が課題とかマネージャーへと育てる人材の定義が明確になる場になりました。人事はこの定義化に参画していくことが役割だと思います。
 
ヤフーのようなIT業界では働き方がどんどん変化していきます。年功序列のような姿ではなく、プロジェクトベースで最も参加するに相応しい人材が国境や言語を超えて参画していきます。人事は未来の自社にあったマネージャーの姿を想像しながら、育成をしていくことが役割だと思います。



アサインではなくチョイスで仕事を決められる会社に
 
川内:石川さんのお話のなかで「ローテーション」という言葉が出てきましたが、どのようにジョブローテーションしていくのが理想的でしょうか。
 
石川:ローテーションというのは日本独特の考え方ですよね。ローテーションをローテーション目的にやってしまうと海外では人材は流出してしまいます。その人のやりたいことの実現と会社のやりたいことが一致していないと回らないと思います。
 
本間:そうですね。ローテーションに関しては同感です。ヤフー前社長から「(ヤフーはアサインではなくチョイスで仕事を決められる会社にしたい」と言われたことを思い出しました。会社がアサインするのではなく、「自ら仕事をチョイスする」。もちろん全ては個人が望む通りにはなりませんが、人事として「チョイス」できるようになる会社を目指すことが仕事だと感じていました。これまでの形に合わせるのではなく、新しいことにどんどんチャレンジしていくことこそがダイバーシティや新しい働き方が叫ばれている中で正解なのかな、と思いますね。
 

大事なのはタイミングとスモールスタート。育成に「気合い」はいらない
 
川内:人材を育てていくにあたり、優秀な人材を見極めていく必要があるかと思いますが、マネージャーへと育てていく人材の見極め方や管理職への投入の仕方などで何かアドバイスをいただけますか?
 
石川:究極的な質問ですね。将来的にマネージャーになる人が最初から優秀かというと、そうは言い切れません。しかし、違いを生み出せるスキルや、先読みができることはその素質のある人だと思います。また、そのためのベースとなる言ったことができるとかスピード感を持ってやれるからとか、最初の基礎要素は見極めるポイントとしてあるのかなと思います。
 
川内:本間さんはいかがでしょうか。
 
本間:はい。優秀な人材はいくら投資しても辞めていくんですよね。
 
一同:笑


 
本間:かつては幾多もの修羅場を乗り越えてきた人を管理職として据える傾向が強かったのですが、今や修羅場もリソースです。修羅場の数も少なくなっていますし、企業としても貴重な修羅場をどのように与えるのか真剣に考えなければなりません。しかも、現在は修羅場がなくても人は育つはずです。人事としては日々コツコツと仕事に向き合いながら数名単位の組織をマネージしている人をリーダーとしてしっかり評価して育てていく必要があると思いますね。
 
石川:修羅場において大事なのは、「当事者意識を持つ」ということですね。「誰も助けてくれない」だったり「未来をなんとかするしかない」という攻めであっても守りであっても修羅場を通して「突破」していく力というのが、どのようなタームでもマネージャーとして相応しいスキルなのかもしれません。
 
川内:ありがとうございます。最後にお伺いしたいのですが、人事が何か施策を打とうとしても現場からの反対や稟議が通らないなど、さまざまな問題があるかと思います。そこを人事の方が上手く突破していく方法があれば一言ずついただければと思います。
 
石川:非常に難しいのですが、「フェアネス」が重要だと思います。今の組織の中で新しい取り組みが行われようとしていることは決して隠すべきではなく、対象者本人にも分かるようにすることは「フェア」ですよね。「TIME」「TALENT」「ENERGY」という話もしましたが、あらゆるスパンでゴールを定めながら進められるというのが大切かなと思います。
 
川内:ありがとうございます。では本間さんお願いします。
 
本間:気合いを理由にするのはもう辞めたいですね。あと主体性とか。頑張るとか気合いとかを理由にして大きくやろうとせず、タイミングを見計らってスモールスタートできればいいと思います。大事なのはタイミングとスモールスタート。小さい部署単位で始めてそれを拡大していくイメージですね。



川内:お二人のお話をお伺いしても正解っていうのはなくて、これはまた時間が経って1年2年たてば違う話をしている可能性もあるのかなと思います。しかし、正解がないなかでも、マネージャーの育成が大事だというところは絶対に変わらないというように思います。そのための成功事例。それが全部の会社に当てはまるのかはわからないですが、もっともっと情報提供するような機会をつくりたいなという風に改めて思いました。ありがとうございました。



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