なぜなら、変化の時代は昨日までの成功方程式が使えなくなり、新しく見いだす必要があるからです。前回の記事ではそれを踏まえた上で、自分自身の新しい価値を再発見していくためには、あえて全く違う価値観の中に自らを晒していくことが重要だとお話ししました。
では、なぜ気づきの視点が多い人ほど、変化の時代に強いのでしょうか。
みなさんはSNSで再び話題になった「レジチョイサーよしえ(作:福井セイ)」という漫画をご存知ですか?この漫画は、スーパーのレジに並ぶ時、どのレジが最も素早く会計してくれるかを推測し、速さを競う漫画です。作中では、伝説のレジチョイスおばさんが、その日の混み具合や、レジスタッフの熟練度から体調、気候に至るまでの情報を瞬時に頭に叩き込み、どのレジが最も早く会計が終わるかを判断するシーンがあります。
このシーンをビジネスに置き換えると、スピード勝負な変化の時代においては、気づきの視点が多い人ほど勝てるということがわかるでしょう。
さらに、こういった気づきの視点を増やすエクササイズで思い出すのがリクルートの広報が行っていたゲーム的訓練です。そのチームでは、脳内エクササイズとして山手線ゲームを行っていました。
例えばお題が「新聞紙」だった場合、新聞紙をどんなアイデアによって活用できるかを何通りも発想していきます。「ニュースを詳細に、まとめて読むことができる」とか「筒型にして濡れたブーツの内側に入れ乾かす」とか、「火おこしの燃料になる」といった具合です。
「西野サロン」で起きている高速学習
つまり、一つの現象や物事に対し、どれだけ多くの視点を持てるかが大事なのです。そして、多様な視点を高速で吸収しているのが西野亮廣さんであり、彼が主催する「西野亮廣エンタメ研究所」のメンバーでもあります。
その理由はなぜか? まず特筆すべきは、サロンの構造です。西野さん自身が旗を立て、冒険の第一歩を踏み出すから、サロンメンバーは彼の冒険の一員であるために、新しいアイデアをどんどん提供するようになります。つまり、先述したアイデアゲームでいえば、西野さんが「新聞」と発言した瞬間に、サロンメンバーによって、何千どおりものアイデアが本人の元に一瞬で届くようなイメージです。
しかも、メンバーはなるべく西野さんに面白がって欲しい、彼と一緒に自分も冒険の最前列に立ちたい思いから、少しでも西野さんが思いつかないようなアイデアを練るでしょう。
例えばメンバーに学校の先生がいたとしたら「うちの学校では新聞紙を雑巾がわりにして、窓を拭きます。実は非常によく汚れが落ちるんです」とアイデアを投げかけるとします。このアイデアは、学校の先生ならではの視点なので、なかなか他の人には思いつけないかもしれません。つまり、メンバーのうち、「離島に住んでいる人ならではの視点」や「本屋のスタッフだから思いつくアイデア」など、その人ならではの気づきの視点が西野さんの元に届くことによって、西野さんは毎時、超高速学習をしているような状態になるのです。
さらに、これらのアイデアがオンライン上で可視化されることによって、サロンメンバーは、西野さんの元に集まったアイデアを、同時に吸収することができます。つまり、「西野さん」という旗印そのものは、あくまでメンバーにとってのアイデア捻出のための壁打ち相手にすぎないのです。しかしそれが「冒険の第一歩を踏み出す西野さん」であるからこそ、より多くの玉が当たる仕組みになっているのです。
やがて、西野さんとともに、サロンメンバーも進化していくことになります。このような進化の輪を、西野さんはオンラインサロンで作り上げているのです。
彼のサロンの仕組みがわかると、自ずと、イノベーションを起こすチームの作り方が見えてくるのではないでしょうか。
連載 : 働き方革命最前線 ─ポストAI時代のワークスタイル
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