シリコンバレーと北京の投資家らは、事態の推移を注意深く見守っている。中国のテクノロジー企業は、アイデア面でも資金面でも米国の企業の支援を受けて成長を果たしてきた。北京の中関村ソフトウェアパークと、シリコンバレーのサンドヒルロードの投資家らは、10数年に渡り緊密な関係を築いてきた。
米中の投資家の交流がシナジーを生み、スタートアップの成長を加速し、2国間にまたがるイノベーションを生み出してきた。
ニューヨークのアドバイザリー企業Rhodium Group によると、2018年に中国のVCは31億ドル(約3450億円)を米国のスタートアップに投資し、2017年の21億ドルを上回った。投資先の大半は、今後のテック界の動向を左右するディープテック領域だった。
さらに、アセットプロバイダのPreqinによると、2018年に中国のVCが参加した米国企業の資金調達は231件に及んでおり、全体の9%近くに達していたという。しかし、中国企業による米国のテック企業のM&Aに関して、米国の当局は既に厳しい監視の目を注ぐようになっている。
それでも、長年に渡り米中にまたがる投資を行ってきた投資家らは、当面の間は、2国間の緊張がテック領域の投資にさほど大きな影響を与えないと考えている。
シリコンバレーのCSC Upshot Venturesの創業パートナーのMing Yehは「テクノロジーはグローバルなものであり、国境は存在しない。当社は今後もクロスボーダーな投資活動を継続していく」と述べた。
米中のテクノロジー分野に投資する、Atlantic BridgeのDavid Lamも同意見だ。「この分野ではグローバル化が進んでおり、時計の針を巻き戻すことは不可能だ。一部の政治家たちは、異なる意見を示すだろう。しかし、彼らが政治的意図から2国間の間にバリアを設けようとしても、ビジネスの世界はビジネスの理屈で動いている」とLamは話した。
仮に米中間のクロスボーダー投資が減速することになれば、イノベーションの速度は停滞する。また、長年に渡り米中にまたがる投資を行ってきたVC企業も打撃を受けることになる。
しかし、逆風が強まったとしても、中国のVC業界には経験豊富な投資家グループが結集しており、彼らは事態に対処する手段を心得ている。彼らは今後もしっかりと米国に足場を置き、米国への投資を継続していくはずだ。