女子の気持ちの代弁者 あいみょんとダイバーシティと

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1995年生まれのシンガーソングライター、あいみょんが今、10代~20代を中心に女子の心をつかんでいます。昨年以降、ネットやテレビ、雑誌などあらゆるメディアで「あいみょん」という言葉が行き交い、急速に注目を集めています。

ツイッターやTikTokといったSNS時代を追い風にして、「過激」「独特の世界観」といったワードと共に語られることの多い、あいみょん。今回は、彼女の魅力と人気の理由を考えてみたいと思います。

あいみょんの歌詞を知るたびに、あいみょんファンの話を聞くたびに思うのは、あいみょんが10代~20代にとって「自分たちの気持ちを代弁してくれる存在」であるということ。ミレニアル世代の揺れやすい心をやカッコ悪い等身大の本心を代弁してくれる歌詞が支持されています。

誰しも、日々生きていれば「あ~だめだな自分」と自己嫌悪に陥ることがある。なんなら、今の10代~20代は特にそうしたモヤモヤを抱える人が多い感覚がある。でも、そんな時に欲しいのは「本当にだめだね」と責める厳しい声でもないし、「だめじゃないよ!」というポジティブな励ましでもなかったりする。

友達にはさらけ出せない、自分の心のすっぴんの部分に、「そういうこともあるよね」と共感し、ゆるく受け容れてくれるあいみょんの歌詞のあたたかさが、今の時代にマッチしているのだと感じます。

デビュー曲は、「貴方解剖純恋歌 ~死ね~」。この文字の並びから連想されるものを裏切ることなく、むしろ超えてくる歌詞の衝撃度。「あなたの両腕を切り落として 私の腰に巻き付ければ あなたはもう二度と 他の女を抱けないわ」と、好きな彼を自分だけのものにしたい女子のどろっとした気持ちを、「ここまで言っちゃう?」と焦るほどの言葉で表現しています。

等身大なのにインパクト大。「その気持ちわかる~」と、「ここまで思ったことないけど、わかる」の、ちょうど良い按配が憎いほど巧みなのです。

「〇〇ちゃん」という曲の一節、「私のどこがダメですか? 可愛くなる努力は医者に頼っちゃったけど 将来の夢はお嫁さん 誰か叶えてね」は、美容整形が他の世代は違う感覚で広まり、受容されている今を生きるあいみょんだからこそ、歌詞にできているのではないかと思います。
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文=山田茜

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