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2019.03.22

作業着を纏い、泥臭く進む元エリート。40兆円市場に潜む不条理を壊す

浅草から吾妻橋を渡ると、眼前にはスカイツリーの頂点がフレームアウトするほど間近に見える。大きく様変わりしたように見えるこの辺りの景色も、路地に入れば相変わらず、従業員数名規模の町工場が点在する。

『下町ロケット』などフィクションの世界にも描写されるように、日本の町工場による「ものづくり力」には依然として大きな期待が寄せられている。反面、人材不足、市場競争力や生産性の低下など構造的な課題も数多く、経営不振にあえぐ会社も少なくない。

「当社の提携先のうち、トップ3に入るほど大きな受発注をしていた加工会社がつい先日、突然倒産したんです。うちとの取引以外、約8割を大手メーカーに依存していて、その赤字が膨れあがり、銀行からの融資を断られ、消費者金融にまで手を伸ばした結果でした……長年取引してきたメーカーとの関係を打ち切ることができず、赤字でも請けざるを得なかったのです。

高い技術力とスキル、『ベンチャーと一緒にやりたい』というパッションを持った企業が、しがらみと非効率によって潰されていく――。これ、おかしいですよね?この理不尽を一つでもなくしたいんです、僕は」

そう語るのは、キャディ株式会社、代表取締役の加藤勇志郎。東京大学卒業後に入社したマッキンゼー・アンド・カンパニーにおいて史上最年少でシニアマネージャーに就任し、グローバル戦略構築、新規事業策定などに従事したいわゆるエリートだ。

そんな彼が現場の最前線で、「調達領域の構造課題」に直面した経験をもとに、2017年11月にキャディを創業した。運営する製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」は、わずか1年半弱のうちに利用社数が3000社を超え、全国の提携加工会社は約100社に上る(2019年3月現在)。

六本木でも渋谷でもない、浅草。オフィスも決して華美ではなく倉庫のような雰囲気。ここに半年で5倍に増えた社員たちが膝を突き合わせて働いている。



未開の40兆円市場は、悲哀で満ちていた

学生時代に起業した経験を持つ加藤は、「より世の中にインパクトをもたらせるような大きな社会課題を見いだしたい」とマッキンゼーへ入社。製造業分野、とりわけ調達領域のコスト削減と構造改革に従事するなかで、その途方もない「非効率性」に着目することとなる。

「設計はCAD、製造は自動化、販売はAIなど各領域はテクノロジーによって効率化されている。しかし調達の工程だけが、ほとんど改善されていない状況でした。なかでも僕が担当していた分野は多品種少量の部品を調達する必要があり、メーカー側の担当者は一人で一日あたり約400点もの部品を発注していたのです。

一方で受注側となる板金加工会社は国内に2万社と存在し、その半分以上が従業員3人以下の零細企業。発注側とすれば、各企業の強みがはっきりとわからず時間もかけられないから、まとめて数百という部品を発注する。すると1社の売上比率が高くなり、コストカットを言い渡されると赤字が、という構造だったのです」

要するに加工会社は受け取った数百種類の図案を見て、自社で製作できるものだけを請け負い、それ以外は孫請け会社に外注。その結果、コストはふくれあがり、利益は圧迫。「作れば作るほど赤字」という会社が増えてしまっているのだ。

「メーカーの調達部門は、一日中右から左へ帳票を切る作業を行うばかり。町工場は、一社依存で不得意分野も一様に請けざるを得ず、ドラマのワンシーンのように一方的にコスト削減を言い渡され、赤字に。ここにテクノロジーを介在させることで、プロセスを最適化し、受発注双方にとって健全な取引を行うことができないかと考えたのです」


ダクトの留め具など、オフィスを見回すと板金加工品がすぐに見つかる

日本の製造業市場は180兆円規模。そのうち調達関連にかかるコストだけで120兆円にものぼる。なかでも加藤が目をつけた多品種少量生産業界は、その3分の1となる40兆円規模の市場だ。ここにメスを入れると、業界を救えるかもしれない。起業のタネを見つけた加藤は動いた。
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