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2019.03.18

仕事を辞めたいのは、睡眠のせい? 組織の「眠り方」を変えるサービスとは

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2つ目のサービスが、組織の管理者向けサービス「O:SLEEP Analytics」だ。上司はメンバーの年齢層や勤務体系ごとに、睡眠時間や睡眠の質といったチーム全体の統計データを確認できる。

実は、睡眠データからわかることはとても多い。例えば、パフォーマンス低下や辞職につながりそうな睡眠習慣をしている人の割合など、仕事に悪影響が高い生活をしている社員の割合。ほかに、生産性が高い人だけでなく低い人、辞めない人に共通しているライフスタイルなど、部署のパフォーマンスを上げるヒントも得られると谷本はいう。

「最近はストレスチェックを実施する会社も増えていますが、主観的かつ社員が本音を書かなかったり、最悪嘘をつくこともできるアンケートでは、有用なデータはなかなか得られません。一方、睡眠データからは社員の『本音』が客観的なデータからわかりますので、主観的なアンケートデータを相互補完できます」



このように書くと、社員の個人情報が上司に筒抜けになると思われるかもしれないが、そんなことはない。

「O:SLEEP Analytics」で閲覧できるのは、組織メンバーの情報をまとめた統計データのみ。個人名と紐づけられた情報は、本人が承認しない限り会社や産業医の手に絶対に渡らないようになっている。

エビデンスだけでない、「本当に納得できる睡眠サービス」を

2016年時点で、睡眠市場(寝具新聞社調べ)は1兆円を超えるといわれている。2017年には睡眠トラッキング(記録)企業のBedditを買収し、2020年までにApple Watchにトラッキング機能を搭載するといわれるアップルや、寝具メーカーの西川産業とともに睡眠関連サービスへの参入を開始したパナソニックなど、そのプレイヤーは睡眠ブームといわれるほどに増え続けている。

その中でO:が他社と異なるのは、睡眠を個人の問題ではなくビジネス課題として捉えている点。そして単にデータを測定・記録することよりも、そこから人の生活を変えるソリューションの提供に注力している点だ。谷本は、睡眠サービスに必要な役割をこう話す。

「多くの企業は、より正確・精密なデータを測ろうと技術向上を目指しています。それも大切ですが、更に大事なのはデータを取得することそのものよりも、そのデータを活用して『自分が満足している生活』を再現させるソリューション部分ではないでしょうか。

例えば、多くのアプリでは1日ごとの睡眠状態を細かく表示しています。これを週間で表示した上でアドバイスまで提供できれば、『きょうの体調が良いのは、先週こういうことをやったからですよね』など、より長いスパンで体調と眠りの関係に気づけます」


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これからO:は、2つの側面からサービスを強化する。まず、「組織への指導面」として部署ごとの生活の傾向や改善アドバイスを直接指導する組織コンサルティングサービスを開始予定。モチベーションや企業戦略についてのコンサルティングが多いなかで、「ウェルビーイング面での組織コンサルティング企業」としてのポジションを獲得したいという。

2つ目の「個人の睡眠サポート」については測定技術の向上はもちろん、企業に所属する産業医をより働きやすくすることも目的だ。

「いまは非常勤の嘱託産業医も多く、勤務時間的にも社員を充分にサポートするのは容易ではありません。日本の労働で発生する多くの問題は、この社会の歪みが表出しているケースが多い。産業医の皆さまの取り組みを支援することで、この歪みを是正してあらゆる人のQOLを高めることができるはず」
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文=野口直希

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