グーグル系セキュリティ企業「Chronicle」の驚異的ディフェンス力

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グーグルの親会社アルファベットが、サイバーセキュリティ企業「Chronicle」を立ち上げてから1年が経った。同社は、初の製品となるBackstoryをリリースした。

「Backstoryは、ビジネス版グーグルフォトのような製品だ。グーグルフォトは、クラウドに保存した写真を整理したり、被写体の顔を認識してテーマを作成したりすることができる」とChronicle のCEO、Stephen Gillettは話す。

Backstoryは企業のサーバや従業員のノートPCやスマホなどに保存されたデータを、インデックス化し、クラウド上で整理してくれる。ユーザーは、「私のPCからロシア政府のサーバにデータが送信されていないか?」といった質問をすることができる。

サイバーセキュリティの捜査担当者であれば、ロシア政府が取得した情報の種類や、取得した日時、手法などを確認することができるという。

Backstoryは、グーグルのインフラ上で開発されており、同社のストレージや処理能力を活用した高品質なサービスだ。Chronicleを率いる3人の経営者のうち、チーフ・セキュリティ・オフィサーのMike Wiacekとシニア・エンジニアのShapor Naghibzadehは、長年グーグルでセキュリティ・エンジニアを務め、「Threat Analysis Group」の創設メンバーでもある。

彼らは、サイバー犯罪や国家ぐるみのハッキング行為の取り締まりに長い間携わってきた。

アルファベット傘下には、ディープマインド(DeepMind)やグーグル・ブレイン(Google Brain)など、AI分野で最先端の研究を行っている企業があり、Gillett によるとChronicleはこうしたリソースの恩恵にあずかっているという。

一方で、Gillettは「我々はグーグルではない」と述べ、グーグルと距離を置いていることをアピールする。例えば、Backstoryの法務やプライバシーの規約はグーグルと異なり、ユーザーはグーグルやその提携企業が、商用目的でデータを利用することを心配しなくて済む。シリコンバレーの企業によるデータ乱用が大きなニュースとなる中、企業はデータ利用に関してナーバスになっている。

Chronicleは、マルウェアをスキャンするサービス「Virus Total」など、アルファベットやグーグルのリソースを活用することで脅威を的確に検出することが可能だ。Backstoryは、常時ネットワーク記録を参照して新しい脅威をチェックし、有害なサーバへのアクセス記録やマルウェア感染についてユーザーに報告する。
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編集=上田裕資

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