大谷選手は、昨年、投打の二刀流としてベーブ・ルース以来100年ぶりの大活躍をし、新人賞に輝いたのは誰もが知るところだろう。開幕を約1か月後に控え、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、スポーツ欄をまるまる1面割いて、大谷が大リーグの戦略そのものを変えつつあるという特集記事を掲載した。
それによれば、MLBの各球団が、大谷が切り拓いた道を、自分たちの配下の選手にも検討させようとこれまでの常識を変えてきているというのだ。同紙は、各球団が、アマチュア時代に二刀流だった選手をあらためて仔細に点検し、今シーズンからゲームに投入しようという動きを伝えている。
つまり、大谷に続く二刀流がさらに現れるだろうと予測している。選手起用法以上に重要なベンチの仕事はなく、まさに大谷が野球そのものを変えているという考えは興味深い。
MLBの戦い方も変わる
シンシナティ・レッズのマイケル・ローレンゼン投手(Nuccio DiNuzzo/Chicago Tribune/TNS via Getty Images)
具体的には、スプリングトレーニングで、シンシナティ・レッズのマイケル・ローレンゼン投手(27才)を打者にも使おうという試みや、テキサス・レンジャーズのマシュー・デビッドソン内野手(28才)を投手で起用するという例をあげている。
ローレンゼン投手は、アマチュア時代には立派な二刀流だった。実は大学野球には、二刀流として実績を残した者に与えられるジョン・オルルド賞があるが(ワシントン州立大学の二刀流選手だったジョン・オルルドの名前から由来)、ローレンゼンはもちろんこれを受賞している。
しかし、去年のこの時期、大谷がスプリングトレーニングで不調で、「二刀流など無理だ」とか「二兎追うものは一兎をも得ず」などとさんざん罵声を浴びたのを思い出すまでもなく、戦略やデータ管理がなによりも重視される現代スポーツにおいて、大谷より先にMLB入りしていた同投手にその機会は与えられてこなかった。
しかし、大谷旋風が吹き荒れたあとの今期、レッズのディック・ウイリアムス球団社長は「我々は革新する」と記者の取材に答え、同投手を二刀流で使うことをこのスプリングトレーニングで実践すると話している。二刀流に慣れていないベンチサイドは、ローレンゼンが盗塁などしてスライディングをするたびに肝を冷やすようだが、当の本人は「僕は8才から盗塁しているんだから」とあっけらかんとしている。