経済・社会

2019.03.13 10:30

14カ月収容され、命の危機にあるクルド人男性。救急搬送を拒否した入国管理局の対応を問う

PhotoAlto/James Hardy / Getty Images


救急車がそこまで来ているのに、緊急状態にある人が乗せさせてもらえない。病院に連れて行ってもらえない。迫害により国にも帰れないチョラクさんが、1年以上出られない入管の中で命を落としたら、日本政府はいったいどうするのか?
advertisement

2018年には、難民申請中だったカメルーン人が体調悪化にもかかわらず放置され、入国管理局に収容されたまま命を失った。男性が施設内で「死にそうだ」と声をあげ、もがき苦しんでいるのに7時間以上放置されたあげく死亡するという衝撃的な出来事だった。

国家に守ってもらえず祖国を逃れて、せっかく命をつないだチョラクさんのような人たちが、また国家に殺されてしまう。いまメディアが取り上げないと、またなにも生かされない悲しい教訓が増えるだけだ。

チョラクさんのように、何かしらの理由で日本での在留資格をもらえない人であっても、自由権規約第6条「生命に対する権利」は有しているはずだ。
advertisement

命の危険があるときに「あなたは日本に在留する資格がないので病院へは連れて行きません」と対応するのは、人権侵害に他ならない。

一刻も早く、チョラクさんを病院に搬送してほしい。チョラクさんは普段、弱音を吐かない人だ。彼がダメだと言っているのだから、本当に危機的な状況なのだろう。


日本人のみなさん。

私たちの国で、今起きていることを知ってくださってありがとう。

もう一度、日本人も外国人も、被収容者であってもクルド人であっても、同じ人間であることに立ち返ってみませんか。

もし、これが自分の旦那さんだったらと、考えてみてほしいのです。

メディアのみなさん。

これを書いている段階では、ひとつの英字メディア以外は、マスコミは現地にいないそうです。しかし、ツイッターでは、トレンド入り。かつてないほど多くの国民の注目を集めています。ジャーナリズムの力を、まだ彼らは信じています。



弁護士の皆さん。特に、いつも闘ってらっしゃる難民弁護の弁護士以外のみなさん…。

いくつかの現地からの情報にある通り、本当に「看護師の判断で救急車不要と言った」のであれば、そのような判断は、(お世話になっている弁護士さんによると)看護師ができるのがあくまで診療の補助であり(保健師助産師看護師法5条)、診察は医師の専権事項ということからすると、医師法違反が疑われる事態でもあります。

2018年3月に法務省入国管理局は「被収容者の健康状態及び動静把握の徹底について(指示)」という以下の内容の通達を出しています。

「時間帯により看守責任者等が当該被収容者への対応を判断せざるを得ない場合は、 体温測定等の結果に異状が見られなくとも、 安易に重篤な症状にはないと判断せず、 ちゅうちょすることなく救急車の出動を要請すること」(以上、抜粋)

今回のような事態は、これまで何度も繰り返されています。

違法な状態が放置されている現状について、是非先生方のお立場から問題提起の声をあげていただき、あるいは、伝えるべき所に伝えていただけませんか?

【追記 3/13 17:50】
3月13日午後1時すぎ、入管からチョラクさんへのご家族に対し、すでにチョラクさんが施設外の病院に搬送された、と説明がありました。

同日行われた通常国会の法務委員会でも、佐々木聖子入国管理局長が個別の事案については回答しないと前置きしつつ、「一般論として当局が要請していない救急隊員には、事情を話して帰ってもらうことはありうる」と答弁しました。

結果的にチョラクさんが搬送されたということは、報道や国会答弁の影響だと思います。今回、さまざまな政党の議員さんから法務省へ働きかけてくださりました。命に関わる非常事態、多くの方々が関心をもってくださり、議員の方々も動いてくださっています。仕組みが、制度が、変わりますように。

*この記事は、渡部清花個人として書いたもので、団体の公式見解ではありません。

文=渡部清花

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事