難民から考える、日本と世界の「未来」

PhotoAlto/James Hardy / Getty Images

東京・品川の東京入国管理局で3月12日、収容者のクルド人男性チョラク・メメットさんが体調不良を訴え、救急車が出動したにもかかわらず、入管が病院への救急搬送を拒否したとして、チョラクさんの家族や支援者らが抗議している。

難民支援のNPO法人WELgee代表の渡部清花氏が、これまでの経緯を緊急寄稿した。


「助けて。どうしたらいいか、もうわからないの……」日付が変わろうとしていた頃、電話口の友人の声は震えていた。 

3月12日、東京・品川の入国管理局で長期収容されているクルド人男性チョラク・メメットさん(38)の容態が急変したにもかかわらず、入国管理局は2度にわたって救急車による緊急搬送を拒否した。私は入管の前にいるクルド人の友人たち・そのご家族からの連絡で知った。

「どうしたらいい?旦那は、朝まで生きられないかもしれない...」1回目に来た救急車は、結局本人に会わず、入管職員だけに会って空のストレッチャーを乗せて帰ってしまったという。

2回目の救急車が到着したときには、裏口からチョラクさんが救急車で搬送されたことが期待されたが、救急相談センターに確認したところ、入国管理局からは誰も運ばれていないことが発覚した。現場は混沌としている。


「14年間難民認定されず…収容施設のクルド人が語った日本での現実」

チョラクさんは、兄がクルド人の独立運動に参加していたことから、自分の身にも危険を感じ、14年前の2004年、身重だった奥さんを国に残して、埼玉に避難していた兄を頼って来日した。

その後奥さんもチョラクさんを追って来日し、いまはトルコで生まれた長男(中学2年生)と日本で生まれ小学校に通う次男・三男の5人で生活している。

いま日本にいるクルド人は、埼玉を中心に2千人以上と言われている。しかし、難民認定されている人はゼロだ。

(FNN PRIME 2018年8月10日)


いま命の危機にあるのは、この記事に登場するチョラクさんだ。

たまに彼と面会する私もこの日、取材記者の鈴木款さんと一緒に入国管理局の面会室に入った。

この夏の時期も、チョラクさんは痩せてゆく一方だった。収容期間は2019年3月の時点で14カ月間にも及び、衰弱が進んでいる。

チョラクさんの奥さんと彼女の妹さんによると、3月12日は以下のような経緯だったという。

朝、奥さんはいつものように品川の入国管理局に面会に行った。しかし、入管職員は「今日彼は、具合が悪いから面会できません」と奥さんに告げた。

奥さんが入国管理局の4階に移動し、「何の病気ですか?」と聞くと入管職員が「面会の方で聞いてください」としか言わなかった。

そのあと、奥さんは5分間だけチョラクさんと面会した。2人の入管職員がチョラクさんの両側を支えているが、彼は一人ではとても歩けない状態だった。

チョラクさんが「息が苦しいよ、頭が痛い…」と訴えたため、奥さんは面会をすぐ終わらせ、総務課に声をかけた。

奥さんが「外の病院に行かせてください」と申し出ると、入管職員は「13時から16時の間、入管に医者が来るから診てもらいます」と答えた。

奥さんたちは、入管で15:30まで待ち、職員から「薬を出しましたから」と言われたので、その言葉を信じて埼玉県蕨市の自宅まで戻った。

しかし午後5時56分、チョラクさんからの電話を受け、それが真実でなかったことを知る。薬はおろか、医者の診察さえなかったという。

文=渡部清花

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