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2019.03.17

ミシュラン3つ星を世界最年少で獲得した鬼才、「星返上」の真意は

マルコ・ピエール・ホワイト


──料理としての完成度か、食べる人にとっての一皿かと問われたら、どちらが重要でしょう? たとえばある客の好みに合わせて、その客に出す料理を変えますか?

その土地の嗜好は考慮するべきだ。たとえば日本人とかシンガポール人とか、アジア人の嗜好。彼らの舌は繊細で、塩気に敏感だ。料理の味付けも、私たち欧米人とは違って当然だ。塩の代わりに醤油を使ったりとかね。そういうことは、意識すべきだろう。

あとは、たとえば、ジビエを出す時。ヤマシギとか、ヤマウズラとか、ハムとか。私はかなりマイルドな味付けが好みだが、刺激が強いのを好む人もいる。料理を出すときは私の方法で提供するが、必ずお客様に、あらかじめ説明するよ。火入れの仕方にしても、メニューに、ビーフはレア、ラムはミディアム、などと書いておくんだ。

──インスタグラム隆盛の時代ですが、テレビのショーに出演するシェフの役割はどう変わるでしょう?(注:ホワイトは、人気の料理・リアリティ番組「ヘルズ・キッチン〜地獄の厨房」の鬼シェフ((チーフ))役を務めたことがある)

見当もつかないね。インスタグラムをどうやって見るのかも知らないんだ。私の携帯はこれだよ(と、旧型のノキアを見せる)。

テレビは退屈だね。作り上げられた感じがするから、テレビに出るのは好きじゃない。リアリティ番組を相当やったから、裏で何が起こっているのかくらいはわかる。誰かがもう呼ばれなくなる理由もわかる。私がテレビでやるのは、自分が興味を持てることだけだ。ただ、番組の収録にはときには3、4カ月かかることがあるから、それだけの時間を費やせないことはあるね。

──昨今、世界の舞台で活躍するようになっているインド人シェフもいます。これからのインド料理についてどう思われますか?

まず、これは本気で言うんだが、インド料理は世界でも最高の料理のひとつだ。どれほど最高かについて、十分に注目されていないだけだと思う。日本料理がいいとか広東料理がいいとか言う人は多いが、インド料理はまだそこまでじゃない。

イギリスで私が経験した最高のインド料理は、どれも友人宅で出されたものだった。その後で、レストランでインド料理を食べると、家庭料理とは違う。外国人の観客のために脚色された味だった。

インド料理は知的で、洗練されている。今日はひとつ言葉を覚えたよ。えーと……今日覚えたのは(と、文字を書き留めた左の手のひらを見せる)……「アンダーズ」。感覚、感触の意味なんだね?

30年前のイギリスでは、インド料理店のほとんどは、郊外にあった。でもこの数年で、ロンドンでもどんどん人気が出てきている。だが、アメリカ人の多くはカレーを好まない。彼らの舌にはスパイスがきつすぎるからね。

シンガポールでもインド料理はたくさん食べたよ。マレー系のインド料理の類いだったけれど、すこぶる美味だった。

文=Kathakali Chanda, Pankti Mehta Kadakia 翻訳=松本裕/株式会社トランネット 構成=石井節子

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