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──ミシュランの星を返上したのはなぜですか?

星をもらうのはいいんだが、それを維持するとなると、まあ、ちょっとその……疲れるんだ。そして、私には3つの選択肢があった。

その1、栄光の地位に留まり続けるために、三ツ星シェフとしての感覚を維持する努力をする。その2、実際には厨房に立っていないときでも自分が腕を振るっているように見せかけ、客人には「ミシュラン価格」を請求する。自分で自分の人格を疑いながらね。そしてその3、勇気をふるって、ミシュランの世界に宣言をする。すなわち、三ツ星シェフの名を返上し、引退するとね。

ひとつわかっていたのは、私よりも知識が深くない人たちが、私の仕事を評価していたということ。星を維持するためには、誰かに金を払って私の名前を守ってもらわなければならない。だが、自分の価値、すなわち「星」を守るのに、本当は、自分自身以上に適任はいないんだ。だから私は星を返上した、そしてそのおかげで今日ここにいられる。自分の知識を共有するために、世界中を旅して回れるようになったんだ。守らなければならない、他人が作った評判がなくなって、自由になったよ。

「お食事は楽しんでいただけましたか?」は愚の骨頂

──この先5年間、食の世界を席巻する大きな波が来るとすれば、それは何でしょう?

流行については考えないね。「不朽のもの」は、古典的で、誠実なものばかりと思う。イギリスでは成功しているレストランは本当に誠実で、量も気前のいいところが多い。

ちまちました料理をちょびっとずつ、4~5時間かけて食べなきゃいけないようなレストランには、頭がおかしくなりそうになるよ。だってほんの一口、口に入れたとたんウェイターが飛んできて、「お料理を楽しんでいただけましたか?」とくる。その後、また別の料理がほんの一口分、しずしずと運ばれてきて、どういう料理なのかの講釈と、食べ方の作法の解説を聞かされる。そして、それをようやく口に運んだと思ったらまたすぐに、「楽しんでいただけましたか?」だ。ばかげてるだろ? いや、ウェイターの悪口を言ってるんじゃ決してない、ただ、一口食べるごとに邪魔されたくない、それだけだ。

私の店では以前、味について、お客様には決して聞かないという方針を取っていた。なぜなら、第一に、自分たちの味に不安がないから。

第二に、こっちから聞かないほうが、食べた人が自主的に感想を言いやすいから。聞かれたらどうしたって、答えなければならないだろう? 食べさせておいて、料理した側が味への不安を伝えてどうする? 言いたいことがあれば客のほうから言ってくれるはずだ。サービスする側から会話をねだるのはおかしい。主役は彼らであって、こっちではないんだからね。

どんなに長い、たとえば16品も出てくるディナーでも、主役はあくまでもシェフではなく、食べる側なんだから。

「体験を売る」。それこそがフードビジネス

──インドでの外食産業の状況はアップダウンが激しく、レストランは5年から7年で閉店するのがふつうです。60店舗ものレストランを経営しておられますが、「持続可能な外食ビジネス」を実現する戦略は何でしょう?

人生は、すべてうまくいくということはない。ピザ屋が必ずもうかるわけではないのと同じだ。だから、戦略は立ててもいいが、うまくいかなかったら、それに固執してはいけないんだ。

若かったころ、私はレストランで一番大事なのは料理だと思っていた。だが、今では一番重要なのは「雰囲気」だと知っている。次がサービス、3番目が料理だ。私たちが売っているのは料理ではなく、外食という「体験」なのだということを認めなければ。友達とちょっと出かけようというとき、ものすごく高級な店は選ばないだろう? 誰かに常連になってもらいたかったら、価格もリーズナブルにしなければならない。

文=Kathakali Chanda, Pankti Mehta Kadakia 翻訳=松本裕/株式会社トランネット 構成=石井節子

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