日頃、松下社長が社員に言い聞かせていることがある。
「技術を見る目は、常にフラットでフェアじゃないといけない、ということです。担当者が、『今使っている技術がいい』と思い込むのは危険です。すごいスピードで技術の進化が進んでいますから、今日この技術がいいと思ったものは1カ月後に変わると思った方がいい」。それを素直に認める勇気が大事なのだという。
「努力すればするほど、自分が携わってきたことに固執してしまうものです。でもそれは願望ではあって真実ではない。真実に向き合う勇気が必要なんですよね。次の日、さらにいいものがあったと、切り替えていける余地を持つことが大事です。妥協をすると、結果、消費者に最高のパフォーマンスの商品を提供できないのです」
1日の3分の1を過ごすマットレスで「睡眠貯金」
そんなMTGの「次の一手」を松下社長は明かした。寝具のマットレスだ。
美容と健康を突き詰めていく中で、松下社長は睡眠の重要性に気づいた。1日の3分の1の時間を過ごす寝具を手がけることを考えた。4、5年前からの構想で、試作品を作っては専門家の意見を聞きながら改良を重ねてきたという。今秋頃のリリースを目指している。
「昨年『睡眠負債』という言葉が流行しましたが、我々は質の高い睡眠を蓄積する『睡眠貯金』ができるような画期的なマットレスを出す予定です。多くの人に毎日、家族で使っていただける商品として自信を持っています」
企業は何のために存在するのか 地元・五島列島への思い
生まれ育った五島列島への思いが強い松下社長は、昨年11月に「五島の椿」という会社を立ち上げた。県や市、地域と一緒に、五島列島が日本一生産量の多い椿の葉や果皮、枝などを研究し、原料開発している。地方に眠る資源に新たな価値を見出し、地方創生に繋げたいと考えている。MTGで培った商品開発やブランド創出のノウハウを生かすつもりだ。
「生まれ育った地域や親、先輩、おじいちゃんおばあちゃん、近所の方々……。そういった人たちに喜んでもらうためにも力を尽くしたい。そしてその思いを他の地域にも広げていきたいんです」。
30歳の頃に京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者、稲盛和夫氏の「盛和塾」と出会い、経営を学んできた。日々の仕事のうえで、「塾長」と呼ぶ稲盛氏の教えを常に心に留めているという。
「動機善なりや、私心なかりしか」
大きな夢を描き、それを実現しようとする時、「動機善なりや」ということを自らに問わなければなりません。自問自答して、自分の動機の善悪を判断するのです。 善とは、普遍的に良きことであり、普遍的とは誰から見てもそうだということです。自分の利益や都合、格好などというものでなく、自他ともにその動機が受け入れられるものでなければなりません。 また、仕事を進めていく上では「私心なかりしか」という問いかけが必要です。自分の心、自己中心的な発想で仕事を進めていないかを点検しなければなりません。 動機が善であり、私心がなければ結果は問う必要はありません。必ず成功するのです。(稲盛和夫OFFICIAL SITEより)
「企業は何のために存在するのか。収益をあげ、たくさん納税をし、収めた税金をたくさんの人々のために使っていただけるようにしたいと思っています。儲かればいい、ではなく、本当に世の中にとってプラスになっているのかを常に考えています。ついつい判断が鈍りそうになる時でも、この言葉を自分自身に言い聞かせています」