ビジネス

2019.03.12

日本列島、ネタだらけ。MTG松下社長に聞く、日本人が苦手な「ブランド」のつくり方と、次の一手。

MTG 松下剛代表取締役社長

「いま、人生で味わったことのない経験をしています」。インタビューの最中、社長の方からこう切り出した。

「昨日、今日と、人生で初めて『ストップ安』というものを経験しています。まさに多くの株主様に心配をおかけしていると思います。今の株価だけを見ると、大変心配されていることと思います。本当に申し訳ないです」

株価についてはまだ質問していなかったが、「書いておいてください。これは事実ですから」と強調した。

「我々にはたくさんの新しいネタがありますし、革新的な商品を出していきます。強がりで言っているわけではありません。ようやくマザーズに上場させていただいたばかりで、これからがスタート、本当にスタートしたばかり。このまま落ち続けるMTGではありません。きちんと納得してもらえる業績を出し続けていきます。私はかなり燃えています。次の代にバトンを渡すまで、最低1兆円の会社にします」

トレーニング・ギア「SIXPAD(シックスパッド)」や美容ブランド「ReFa(リファ)」など、美と健康の分野で人気ブランドを手がけるMTG(名古屋市)の松下剛代表取締役社長は、あえて逆境に言及し、自身にプレッシャーをかけた。社長の人間性がうかがえる一幕であった。

日本人は苦手? ブランドはどのようにして生まれるのか

日本人はブランドを創出するのが苦手だ、という言説は多い。「日本人は奥ゆかしく謙虚で、アピールが下手だ」とか「ものづくり信仰が強すぎて、ブランディングが軽視されてきた」といった指摘もある。

日本では珍しい「ブランド創出企業」を一代で築き、上場を果たしたMTG。次々にブランドを生み出せる秘訣と、同社のアイデアの源泉、そして松下社長のビジョン、「次の一手」に迫った。

クリスティアーノ・ロナウドと共同開発した「SIXPAD」は身につけるトレーニング・ギアとして一大市場を創出した。今年2月にブランド誕生10周年を迎えた「ReFa」の美容ローラーは2018年7月末に累計出荷数1000万本を突破。富士山の水が飲めるウォーターサーバー「Kirala(キララ)」や、あのマドンナと共同開発したスキンケアブランド「MDNA SKIN(エムディーエヌエースキン)」なども手がける。





スタイリッシュな佇まいの商品デザインに、ファクトや研究結果に基づいた機能、世界的に著名なアイコンを起用したマーケティング戦略。ブランドごとにストーリーやミッションがあるという。MTGは人気ブランドをどのように生み出しているのだろうか。

ブランド開発システム、4つのファクター

いい商品ができた。その商品をどこで売ろうか、どういうカタログを作ろうか……。「そんなモノづくりでは、マーケットを見失っていく」。そう松下社長は指摘する。

「よくありがちなのが、開発だけ先行していって、『どこに売るの?』『お客様は誰なの?』『売り場のイメージは?』というのを全く考えずに、商品だけが先にできてしまうケースです。これは大変無謀だと思います。作り手が『売れるでしょう』と言っても、押し付けにしかなりませんので」

プロダクトアウトに陥らないよう、MTGではどのような進行を心がけているのだろうか。

MTG社内は、基本的にブランドごとにチーム分けされている。「クリエイション」「テクノロジー」「ブランディング」「マーケティング」の4要素を同時に進行させ、融合させながらブランドを生み出すのだという。
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文=林亜季 写真=柴崎まどか

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