「約2000億円投資」、その内訳
──アマゾンの、イタリアでの投資額は?
2010年から、ヨーロッパに投資した270億ユーロ(約3兆3700億円)のうち、イタリアには16億ユーロ(約2000億円)を投資しています。2018年末のヨーロッパ全体の従業員数は、8万3千人です。
──イタリアへの投資は今後も続きますか?
もちろんです。個別地域の市場をより広げ、ITテクノロジーをもっと浸透させるために、投資は加速されていくでしょう。
──具体的な投資先は?
投資の大部分はロジスティクスに向けられます。売上増を下支えするための、倉庫、物流センターのキャパシティを上げる必要がありますから。一方で、テクノロジーにも多くの投資をします。われわれは、AIや機械学習、音声認識などを使ったサービスを強化するため、新技術研究を進める開発センターをトリノに設立しました。
実店舗展開はあるか
──たとえば、ある政治家に、アマゾンが既存の商取引に脅威をもたらす「悪者」ではない、と説明するとしたらどう言いますか?
議論を繰り広げるつもりはまったくないんです。ただ、IT技術を、脅威ではなくチャンスと理解した上で、商品生産に取り組む企業が多く存在することを伝えますね。9月末に立ち上げた「Launchpad」というプログラムでも、中小企業が、それまで面識のなかった卸売業者や小売業者と一緒に加入することでつながり、道が拓けた、ということがありました。
eコマースについて語る人の多くは、じつは実態を理解していないために、ただ単に脅威と考えているんです。イタリアでもデジタル文化がもっと広まってほしいですね。
──しかしイタリアでは、いまだにアマゾンを、実店舗を閉店に追い込む脅威と見る人もいます。
IT技術によって市場に「共喰い」が起こるというのは、間違った問題意識です。オンラインでの商品販売は、商取引のほんの一部にすぎません。どんなに技術が発展している国でも、20%に満たないんです。実際は、多くの商取引は仮想店舗、オンラインでの取引ではないんですよ。
──そうはいっても、実店舗の閉店はイタリアに限らず、実際に起きています。
もちろんです。それは、実店舗にもイノベーションが必要だということでもあります。新しいものを取り入れることができ、適切なポジショニングさえ取れれば、われわれECにはない利点が得られることもあります。つまり、ある分野に特化することだったり、顧客と直接会話することだったり、商品配達の即時性にこだわることだったり。こういう特性に投資することができれば、実店舗にも成長が可能です。
──米国では、アマゾンが実店舗をオープンしています。ヨーロッパ、イタリアでも実店舗のオープンはありますか。
それについて今はお話できませんが、実店舗展開はわれわれにとって、まさしく「冒険」の領域です。オンラインで業績を上げていくことはできますが、オンラインの限界というのもありますね。
──日曜日に商店の営業が禁止されることについて、どうお考えですか(注:イタリア政府は、日曜営業を禁止する法案を検討中)。
これに関する法律ができたら、検討し、対応していきます。重要なことは、いずれにせよ差別的な規則にしないことです。たとえばドイツでは、日曜の営業停止はすべての人に「同等の権利」です。
──この法律をどう思いますか。
個人的には、日曜にショッピングをするのが好きなんです。平日は時間がないので、唯一買い物に行ける日なんですよね。