PRは点ではなく線で。社会と「対話」することこそが重要
下平:PRについても非常に上手く実施されている印象です。PR戦略で重要視されているポイントはありますか?
後藤:大前提として、最初から上手く出来ていたわけではありません。「Payme」は当初はステルスで事業を推進していくつもりだったんです。ところが、「給与即日払いサービス」という認知度の低いプロダクトをいきなり導入していただこうとしても、怪しまれてしまうことが多かったため、方針を切り替え、後天的にPR体制を構築していきました。
弊社にとって、PR・パブリックリレーションズは「社会との対話」のチャンスです。一方通行に自己満足のメッセージを押し付けるのではなく、世間の反応を見ながら、双方向的に対話していくことが大切だと考えています。
下平:たしかに、プレスリリースを出して終わり、というケースも多くあるように思います。
後藤:「社会と対話する」という意識を持てば、発信するメッセージも改善していくことができますし、リリースを出して終わりではなく次に繋げていくことができます。
例えば、メディアのパブリシティに乗せてもらいやすい題材として「KPI成長度」や「資金調達額」などがあげられますが、「Payme」に関してはサービスの社会的意義を問われることが多かったため、「導入企業の声」を意識的に入れ込むようにしています。実際にサービスを導入してくださった会社の方達が「役に立った」と言っていただけるだけで、社会の反応は大きく変わるんです。
ですので、PR戦略の重要なポイントは、点の発信になるのではなく、発信後の「対話」の部分までストーリーをつくることだと思います。
下平:「社会との対話」という観点をさらにお聞きします。スタートアップが既存産業や固定概念とぶつかった時に、どのように乗り越えていけばよいのでしょうか?
後藤:「破壊と創造」の二元論ではなく、「共存」するための対話が大切だと考えています。
「Uber」が世界に流行ったからといって、既存タクシーが絶滅するかというとそうではない。「Airbnb」の登場でホテルがなくなるわけでもない。「破壊者」ではなく、みんなが一緒に市場を盛り上げていく「仲間」だという発想を持つようにしています。
「Payme」の給与即日払いサービスも、カードローンや貸金業を利用する人がたくさんいるからこそ、成長していく産業です。そのため、反対意見の人の声も丁寧に聞き、衝突でなく「対話」をすること。「共存」していく選択肢を増やすためのコミュニケーションを真摯に続けることが重要だと思います。
連載 : 起業家たちの「頭の中」
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