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2019.03.11 14:30

米スタートアップ界に激震、Yコンビネータ社長が退任を発表

Yコンビネータ社長 サム・オルトマン(Photo by Kimberly White / Getty Images for GLAAD)

Yコンビネータ社長 サム・オルトマン(Photo by Kimberly White / Getty Images for GLAAD)

シリコンバレーで最も著名なアクセラレータとして知られる、Yコンビネータが組織改編を発表した。Yコンビネータは3月8日、同社の社長を務めてきたサム・オルトマンが、会長職に退くとアナウンスした。オルトマンは今後、人工知能(AI)を研究する非営利団体OpenAIの運営に専念するという。

Yコンビネータはこれまで、Dropboxやエアビーアンドビーなどの著名企業を送り出してきた。同社は今回のアナウンスと同時に、本社をシリコンバレーのマウンテンビューから、サンフランシスコに移設する計画も明らかにした。

「過去5年間でスタートアップの中心地の移転が進んだ。多くのYコンビネータ出身者らは、サンフランシスコに住み、そこで働いている」と同社は声明で述べた。

オルトマンの管轄下でYコンビネータは勢力を拡大し、当初は年に2回だった育成プログラムに新たなステージを追加してきた。昨年はスタートアップに無料のオンライン講座を提供するStartup Schoolを新設した。また、卒業チームのシリーズA資金調達を支援するプログラムも追加した。さらに、レイトステージの投資に注力するContinuity Fundの参加もとりつけた。

Yコンビネータは4月に、若手起業家と大手企業のリーダーをつなぐイベント「YC 120」を開催予定だ。オルトマンは今年1月のフォーブスの取材に、「YC 120はハードテック領域のスタートアップにフォーカスしたイベントで、未来のイーロン・マスクを生み出すことをゴールとする。人材のネットワーク効果で、彼らのポテンシャルを10倍に高める」と述べていた。

オルトマンの強力なビジョンにより、Yコンビネータは発展を遂げたが、一部からは規模が巨大になり過ぎたとの指摘もあがっていた。かつては10社程度だった育成企業数は、今では数百社にも達している。この状況に対処するため、YコンビネータはスタートアップのピッチイベントDemo Dayを、2つのステージに分ける計画も進めている。

2005年にポール・グレアムが設立したYコンビネータの運営を、2014年に28歳の若さで引き継いだオルトマンは、近年のスタートアップシーンを代表する人物だ。

ピーター・ティールとの交流でも注目

オルトマンは歯に衣着せぬ発言でも知られ、2017年には「ポリティカル・コレクトネスがイノベーションを阻害している」との持論をブログで展開し、メディアの集中砲火を浴びた。

また、オルトマンは2016年の米大統領選挙でドナルド・トランプ支持を打ち出した、ピーター・ティールを擁護していた。ティールは当時、Yコンビネータの臨時パートナーを務めていたが、その1年後にティールとYコンビネータは関係を断っていた。

オルトマンは今後、2015年にイーロン・マスクと設立したOpenAIの活動に専念する。マスクは2018年2月にOpenAIから離脱している。

フォーブスは現在、オルトマンにコメントを求めており、回答が得られ次第この記事をアップデートする。

文=Biz Carson, Alex Konrad 編集=上田裕資

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