同社の代表取締役CEO後藤道輝氏が考える起業家としての素養や事業立ち上げのポイントについて、Venture Navi 編集長であり、同社の社外取締役も務めるドリームインキュベータ の下平将人が聞いた。(全5話)
「Give」の精神で信頼を積み上げる
下平:ここからは採用・仲間づくりについてお伺いしたいと思います。創業メンバーを口説く際のポイントがあればお聞かせください。
後藤:これは地道に、本気で誘い続けるしかないです。ただ周囲からは「後藤さんはしつこい」とよく言われます。(笑)
創業メンバーの森梨千子(最高技術責任者)なども、DeNAに入社する前から「将来起業するから一緒にやろう」と常に真顔で刷り込み続けていました。ここで重要なのは創業前から周到に準備をしておくこと。創業したいと思ってから仲間集めをするようでは遅いです。
下平:なるほど。とはいえ、そのタイミングではまだプロダクトも見えない中だと思います。
後藤:このタイミングでできることは人としての信頼を積み上げておくことしかありません。人のためにやっていたことが、回り回って自分を助けてくれるのです。
私は昔から「Pay forward」「Give」の意識を持っていました。DeNAで働いていた頃は恥ずかしながら1円も貯金できなかったのですが、その原因は挑戦する学生にお金を貸したり、自分が投資したかったけど実行できなかったベンチャー経営者にご飯を自腹で奢ったりしていたからです。
小さいことだと思いますが、そういった「Give」の行動が積み重なって信頼へつながっていくのだと思います。
人材見極めの特効薬は「一緒に働いてみること」
下平:採用する人材を見極める際に大切にしていることをお教えください。
後藤:最も大切にしているのは、正式内定前に必ず「模擬就業」をしていただくようにしていることです。一緒に働いてみることが、お互いの理解を高める際に最も効率的だからです。
下平:それはインターンなどをしてもらうということですか?
後藤:学生であればインターンでもいいですし、中途の方であれば土日に来ていただいたり、平日に現職をお休みしていただいて会社業務に入ってもらっています。
「地頭」「コミュニケーション力」「業務知識」といったスキル面、「人間性」といったカルチャーフィット面の双方をバランスよく見るためには、面談よりも「模擬就業」の方が見極められる確度が高いと思っています。さらに採用される側にとっても、特に中途の方の場合は自分が加わることで補完できる機能を理解していただいた方が、入社後の満足度が高まります。
採用方法としては時間とコストのかかる手法ですが、結果的に無駄のない仲間集めができると思っています。