ビジネス

2019.03.12

エイベックスが構想する新たな「エンタメ経済圏」 業界も国境も越えていく

エイベックス グループ執行役員 CEO直轄本部 本部長 加藤信介


僕らのコアコンピタンスや得意としている領域はどこなのか。そこは見失わないようにしつつも、自前主義にこだわり過ぎないことも大事にしています。

やはり、僕らはエンタテインメントの会社であり、アーティストなどのコンテンツを保有していることがコアコンピタンスであり、それが強みでもある。有難いことに、そこに対して魅力を感じてくれたり、憧れを持ったりしてコンタクトをとってくれる会社もいて。

その会社が持っているリソースは逆に僕らが持てていないもの。だからこそ、お互いの強みを掛け合わせて、いままでにない価値を創出したり、事業を創出したりできる。こうした共創がこれから求められていく姿なのかな、と思います。

──これだけのアーティストとタレントを保有している会社はそうありませんからね。

なので、僕らの会社でいう新規事業は、既存事業とあえて分断した世界観の中で作るものももちろんあると思いますが、既存事業と連携して強みを活かしながら今までになかった新しい価値創出ができるものや、新規事業目線での既存領域の強化にも貢献できるものもフォーカスに入れて、比較的幅広のポートフォリオで取り組んでいます。

これだけ外部環境が変わる中なので、取り組みたい、または取り組むべき領域は本当にたくさんあります。



海外のスタートアップとも新たな価値創造を

──エンタメコインについても教えてください。

エンタメコインは、フィンテックでエンタメをもっと熱く面白くする会社です。楽曲やライブチケットを購入して頂くなど消費を伴う応援だけでなく、カラオケで歌ってくれたり、SNSで投稿してくれたりといった消費を伴わない応援も見える化し、その応援に対してプレミアムな体験をお返しすることで、これまで以上にファンとアーティストがダイレクトにつながる世界観を目指しています。

そのための手段として、モバイル決済機能も内包していて、サービスのローンチは、今年の真ん中頃を予定しています。今後、段階的に具体的なサービス内容をお知らせしていくつもりです。



──エイベックス・ベンチャーズを吸収する形で、CEO直轄本部がスタートされましたが、投資領域の現状はいかがでしょうか?

昨年度は僕らとシナジーが起こせそうなスタートアップにマイノリティでも出資させて頂き、それによって「スタートアップと協業するとはどういうことか?」「外部と事業シナジーを起こすとはどういうことか?」を実体験し、最適解を模索した1年だったと思います。

踏まえて、今後は僕らのミッション的にもシナジーからより一歩踏み込んだ事業創出に注力して行きたい。つまりシナジーベースの考え方ではなくて、双方メリットがある場合は明確にM&Aし、我々の仲間として新事業創出を行ってもらったり、他社とJVを組成して新事業創出するなど、事業創出に直結するものに投資領域の重点ミッションを置いています。

このミッションに変えたことで、事業創出や事業にドライブをかけていく上でフラットにM&AやJVという選択肢を持ちながら検討することができていますし、meeやエンタメコインのクイックな設立や、事業のドライバーとしてTWHやMAKEYを子会社化という形で仲間に迎え入れることが出来たのは投資チームが新規事業推進チームの隣にいるからです。これ以外にも対外的には随時お知らせして行きますが、M&AやJV案件、複数進行しています。

──海外と比較すると、日本はまだまだエンタメ業界におけるテクノロジー活用は遅れている印象があります。

先ほどお話しした通り、僕たちは海外では世界中の最先端のスタートアップとともに音楽の未来をつくっていくためのオープンイノベーションプロジェクト"Future of Music"をローンチしました。

今までも米国アクセラレーター(起業家支援プログラム)のTechstars Musicへのメンバー参画やだったり、海外のスタートアップへの投資・協業を進めてきましたが、"Future of Music"はこれらの動きをより一層体系化して、力強く推進するためのものです。

"Future of Music"は、2つのチームで構成されていて、1つ目は、ロサンゼルスをベースとした現地子会社のAvex USA Inc.における"Future of Music Investment"チーム。ここでまず音楽イノベーションの中心地のエコシステムで活躍する先鋭的なスタートアップへの出資・サポートを行います。

2つ目は、東京をベースとしたエイベックスの"Future of Music Business Development"チームで、ここではエイベックスのリソースやインフラを最大活用して、日本やアジアにおけるローカルパートナーとして、ジョイントベンチャーやマーケティングアライアンス、自社ビジネスへの積極導入など、投資先との協業を通して新しい価値創造と新規事業創出を行います。
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文=竹中玲央奈 写真=小田駿一

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