確度の高いリーク情報で知られるアナリストのミンチー・クオ(Ming-Chi Kuo)が最新レポートを公開した。クオは2018年にKGI証券を離職し、現在は中国の天風國際證券(TF International Securities)に勤務している。
クオは3月8日のレポートで、アップルが数年前から噂されていたAR(拡張現実)ヘッドセット量産を、早ければ2019年の最終四半期にも始動すると述べた。9to5Macの記事では、製造開始が2020年にずれ込む可能性もあるというが、これは非常にエキサイティングなニュースだ。
ただし、クオによるとアップルのARヘッドセット(もしくはARグラス)の初期バージョンは、単独で動作可能なものではなく、iPhoneのアクセサリ的位置づけの、ディスプレイに特化したものになるという。つまり、コンピューティング処理やレンダリング、インターネット接続などはペアリングしたiPhone側で行われる見通しだ。
この挙動は、アップルウォッチがシリーズ3でようやく、独自のネット接続機能を備えたことを考えても、理にかなっている。アップルウォッチの初期モデルも、通信機能はペアリングしたiPhoneに依存していた。
通信機能やコンピューティング処理をiPhoneに任せることにより、アップルのARヘッドセットは、非常に軽量なものになるという。どれほど軽量になるかは、ペアリングする際にケーブル接続仕様になるか、ワイヤレスになるかによるだろう。ワイヤレス接続の場合は、そのためのバッテリー容量の確保が必要になる。
しかし、筆者はアップルがこの製品の利便性を高めるため、ワイヤレス接続を選ぶと考えている。ケーブル無しで接続できることは、ユーザーに多大なメリットを与える。
アップルのARKitは現時点でも、非常にパワフルなツールだ。しかし、iPhoneの次期モデルに搭載が期待される、高速なプロセッサを用いれば、さらに先進的な機能を実現できる。ティム・クックは約2年前の筆者の取材に次のように述べていた。
グーグルグラスと同様の失敗を犯さない
「私はARの未来に非常に期待している。なぜなら、VR(仮想現実)はユーザーを現実世界から隔離してしまうが、ARであれば現実世界の上に新たなレイヤーを追加できるからだ。世間の多くの人々は、長時間に渡り現実から隔離されてしまうことを好まない。また、VRヘッドセットにはVR酔いの問題もある。しかし、ARであれば現実世界にとどまったまま、新たなレイヤーから情報を取得できる」
アップルがARヘッドセットを提供することは、ARKitを次の次元に引き上げる上でも、必須のプロセスといえる。
このヘッドセットがどのような形状になるかは、現時点では分からない。しかし、アップルらしいミニマリスト的デザインの、魅力的なプロダクトになることを期待したい。
グーグルグラスが発表された際には、奇妙な外見のため賛否両論の評価を得ていた。アップルは、グーグルのような失敗を避けようとするはずだ。
アップルのARヘッドセットの噂は2年ほど前から浮上しており、今回のクオのレポートで、大まなか発表スケジュールが示された。今後もさらに新たなリーク情報がもたらされることを期待したい。