この調査結果が報告されたのは、今年2月に環境科学誌のエンバイロメンタル・リサーチ(Environmental Research)上で発表された調査だ。論文の著者らは、16人の調査対象者の食生活を有機食品のみに切り替え、その前後で尿に含まれる殺虫剤のレベルを分析した。その結果、有機食品を食べるようになってから殺虫剤の水準が低下していたことが分かったが、話はこれで終わりではない。
同調査で主にテストしたのは、従来型の農業では許可されているが有機農園では使用できない種類の農薬だ。食べていないものを排せつすることはできないので、殺虫剤の水準が低下したという研究結果は至って明白なことと言える。
また同調査では、従来型農薬の残留物に関連する健康リスクの有無については言及していない。尿内に化学薬品が検出されることが、必ずしも健康への害や危険性を示しているとは限らないからだ。
これと似たような調査は以前にも行われている。スウェーデンのある有機食品生活協同組合は2015年、今回の調査よりもさらに少ない5人家族を対象とした同様の調査に出資した。
調査対象の家族が従来型の農産物を使った食生活から有機食品のみの食生活へと移行した結果、今回の調査と同様に尿中の合成殺虫剤の水準が減少した。しかしこの場合も、従来型農産物を避ければ合成殺虫剤の摂取量はそもそも減ることが理由だ。
今回の調査と同様、スウェーデンの調査では有機栽培で許可された殺虫剤を検査していない。つまり、有機食品のみを食べることで殺虫剤レベルが軒並み下がるということは示されておらず、分かっているのは合成農薬の水準が下がることだけだ。
有機栽培農家と従来型農家がどちらも農薬を使うことは周知の事実だ。しかし有機栽培農家はほとんどの場合、合成化学薬品ではなく天然殺虫剤を使っている。米連邦法の下、米農務省(USDA)有機プログラムで合成殺虫剤はほとんど禁止されているが、天然殺虫剤の使用は認められている。多くの有機栽培農家は、有機農業の指針に合わせて全体的な農薬量を減らそうと努力しているが、有機食品を無農薬食品と言ってしまえば不正確だ。