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2019.03.11

「作品にコンセプトなんてない」 アーティスト五木田智央が語る自身のスタイル

Tomoo Gokita, "The Great Circus", installation view at the Kawamura Memorial DIC Museum of Art, 2014 Photo: Kenji Takahashi / Courtesy of the Kawamura Memorial DIC Museum of Art and Taka Ishii Gallery


Tomoo Gokita, "Untitled", 2008-2015, mixed media, dimensions variable© Tomoo Gokita / Courtesy of Taka Ishii Gallery, Tokyo

━━五木田さんご自身が気に入っている展覧会や作品はありますか。

2018年、東京オペラシティアートギャラリーでの個展「PEEKABOO」の最後の部屋に展示した、小さいドローイングをたくさん展示した大きな作品です。全体でひとつの作品としたのですが、あの作品は特に印象に残っています。自分でもよく描いたなと思いました。フレームも全て自分で制作しました。

あのドローイング群は数人のコレクターさんが所有する複数の作品なのですが、全て一緒に展示したくてこの展覧会のためにお借りしました。アシスタントをつけることも提案されたのですが、作品の展示はすべて自分一人で行いました。黙々と作業を続けるうちに、自然とああいう丸い形状になっていきました。自分でも感動しましたね。

━━作品の販売に関しては五木田さんも関与されるのですか?

私は口を挟みません。ギャラリーにすべて任せています。任せるといっても一切表にでないわけではなく、作品を購入してくださったコレクターさんと交流する機会はあります。

作品の値段についてもギャラリーに任せています。先日ニューヨークのオークションで、3年前の私の作品が高値で落札されたのですが、買った作品をすぐ売ってしまうんだ、と悲しくなりましたね。

━━3月6日から13日までロンドンで開催されている「マッシモ・デ・カーロ」について、思い入れをお聞かせください。

実は、マッシモからの個展のオファーを一度断ったのです。彼が私のスタジオに来てくれて2019年の3月はどうかと提案されたのですが、当時は別の展覧会の準備で頭がいっぱいで、もう少し先にしてほしいと返答しました。

ところがまた彼が日本に来て私に二人きりで会いたいと言ってきたんです。一対一で六本木の蕎麦屋で飲むうちにまんまと乗せられてしまいました(笑)。

ヨーロッパでの初個展はこうして決まりました。東京で私の作品を扱うタカ・イシイギャラリーの石井さんも、マッシモでの個展は是非やったほうがいいと勧めてくれて。

今年の夏には、マイアミのギャラリー「ビル・ブレイディー」での個展も控えています。ずっと彼のギャラリーで展示をしたかったのですが、LAやロンドンでの個展のため何度も延期になってしまいました。

こんなに待たされても彼はとても理解があり、「皆いいギャラリーだ、やってこい」と背中を押してくれました。

━━最後に、海外と比べて日本のアートのマーケットをどう思いますか。また、日本の若いアーティストにメッセージをお願いします。

日本のマーケットは少しずつ確実に成長していますが、まだ赤ん坊みたいなものではないでしょうか。スイスの「アート・バーゼル」やLAの「フリーズ」、NYの「アーモリーショー」のように、世界中からギャラリー、コレクター、アート関係者が集まる規模のアートフェアもまだ日本にはありません。

欧米のようにアート作品を自宅に飾る習慣が薄いことが、マーケットがまだ小さい理由かもしれません。

ただ、日本の若いアーティストたちには、マーケットのことなんてあまり気にしないでもらいたいですね。勧めたいのは旅にでること。新しい世界を目にして、それをインスピレーションの源にして欲しいと思います。

連載 : 世界で活躍する日本人アーティスト
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取材=Yuri Yureeka Yasuda 構成=フォーブスジャパン編集部

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