日系企業は「SXSW」で存在感を示すことができるか?

2019年のSXSW、日系企業で最大規模のブースを出展したのがソニーだった



GROOVE X代表取締役 林要とLOVOT

日本館でゲストを迎える「体温のある」ロボット

落合陽一が統括ディレクターを務める日本館「The New JAPAN Islands」は、中央のステージが畳、天井には提灯が飾られている「日本らしい」内装。会場でゲストを迎えるのは、「GROOVE X」の「LOVOT(らぼっと)」だ。

LOVOTは、「役に立たない、でも愛着がある」というコンセプトの元、人に愛されるために生まれた、温かく、触り心地も柔らかいロボット。代表取締役の林要は感情認識パーソナルロボット、ペッパーの開発に携わった人物だ。

「テクノロジーが進化し、ベーシックインカムについての議論が盛んにされるようになった現代で必要とされるは、人の感情に寄り添うようなロボットです。生産性の向上を考える上でも、人の代わりに仕事をするロボットの導入ではなく、人に癒しを与えるロボットが生活にあることが、結果として生産性の向上にもつながるのではないでしょうか」

林は2015年に同社を創業。2017年に43億5000万円の資金調達を経て、昨年LOVOTを発表した。1月にLAで開催された、世界最大規模の電子機器や最新テクノロジーの展示会「CES 2019」にも出展し、IT系ニュースサイト「The VERGE」の「BEST ROBOT」を受賞するなど、注目を集める。

3Dプリンターで寿司を出力、父親が授乳する日は来るか?


電通グループによるSUSHI SINGULARITY

SXSWの中心エリア、コンベンション・センターで3月10日から催されている見本市には、NECや三菱電機などの大手企業から、Forbes JAPANで「JAPAN’s STARTUP OF THE YEAR2018」で特別賞を受賞した、人工流れ星事業に取り組むベンチャー、ALEなどのスタートアップも多く出展した。

中でも多くの人を集めていたのが、電通グループによる「SUSHI SINGULARITY(スシ・シンギュラリティ)」と父親向けの授乳デバイス「FATHER’S NURSING ASSISTANT(ファーザーズ・ナーシング・アシスタント)」だった。

スシ・シンギュラリティは海藻や澱粉からできたパウダーを原料に、3Dプリンターからキューブ型の寿司が出力する寿司店の構想。

電通グループは、昨年も「SUSHI TELEPORTATION(スシ・テレポーテーション)」という、東京で握った寿司を海外で出力するプロジェクトを展示したが、今年は、寿司を楽しむと同時に健康診断ができるようになった。レストラン予約時に検査キットを送付し、その人の体質と不足要素をデータ化することで、パーソナライズされた寿司を作る。開店は2020年を予定。料金は1人あたり3万円ほどになるという。

ファーザーズ・ナーシング・アシスタントは、父親が授乳することを可能にする。製品の片側はミルクタンク、もう片方から授乳ができる仕組みだ。小児科医やベビーシッターからのアドバイスを参考に、母親が授乳する状態に近いデザインなったという。



日本の父親の子育て参加率は未だに低く、日本の赤ちゃんの睡眠時間は世界的に見ても短い。そこで、母親が赤ちゃんを寝かしつける前に行う授乳に着目。父親も授乳できるようになることで、母親の自由時間と赤ちゃんの睡眠時間を増やすことを目指す。

それぞれ展示の目的は異なるが、大手企業からスタートアップまで、日系企業がSXSWにどのような爪痕を残すのか期待したい。

文=守屋美佳

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