フォーブス ジャパン編集部 編集者


RetroTrust(レトロトラスト)

「人々は今、世界で起こっていることに懐疑的になり、時計の針を戻し、過去に所有していた関係性を取り戻し、信頼を回復したいという願望があります」

80年代、90年代のゲームがリバイバルされ、ダウングレードしたバージョン携帯電話が発売される。親世代である40代のノスタルジアに訴求する任天堂の「NESクラシック」「Nintendoスイッチ」の米国での売り上げは好調で、さらにスイッチの付属品を作らせる子ども向けの段ボールDIYキットが発売された。

バハルガマ氏は「レガシーを持つブランドには大きな機会」になると共に、「新旧を融合させるストーリーテリングがより重要になってくるのでは」と話す。

Muddled Masculinity(混乱する男性性)

バハルガマ氏によると、女性へのエンパワメントと、性差そのものへの再評価の機運を受けて、男性にある種の「混乱」が見られるという。奇しくも国際女性デー(3月8日)と重なったSXSWの開幕日だが、ニュースのヘッドラインには「男性は静かにすべき時」や「男性も参画すべき」など、様々な言葉が並ぶ。

アトランティック誌の記者サラ・リッチ氏は、記事「Today’s Masculinity is Stifling(重苦しい今日の男性性)」(2018年6月)の中で、「社会が女の子により広い人生の可能性へのアクセスを与えようとしているのに対し、その連続性として、男の子に、彼らが世界でどのようにあり得るのかを提示していません」と述べ、学校で『ボーイッシュな女の子』はクールとみられるのに対し、『ガーリッシュな男の子』は恥ずかしいこととされると指摘している。正しい1つの道はないが、「同一でないこと」へのエンカレッジ、共感のイノベーションがさらに重要度を増すという。

Innovation Envy(イノベーションへの嫉妬)

以前、SXSWの会場で何回「イノベート」という言葉が発せられたか計測すると、ある時点で65万回言われていたそうだ。起業家、企業、機構に、イノベーティブな競合への賞賛と恐れが入り混じった嫉妬があり、自身の組織によりイノベ―ティブな考えを取り入れなければならないと考える企業が増えている。

多くの企業がピンポン台をオフィスに置き、ハッカソンを開催し、ユニリーバは自社の400以上のブランドとスタートアップをつなげる「ユニリーバ―・ファウンドリー」というプラットフォームを作り、コカ・コーラは「The Bridge」と呼ばれるスタートアップ向けのコマーシャル・プログラムをローンチした。

一方、ウェルスファーゴ、VISA、CITIのように企業内にイノベーション・ラボを作る企業もある。ファストフードのウェンディーズさえモバイルペイメントなどのテクノロジーを試行するラボを作った。

バハルマガ氏によると「今日過小評価されているのは、いかに『恐れ』がこういったイノベーションに対する大きな投資のドライブになっているか、ということだ」と言う。

いくつかの企業や組織は自らのコアを忘れ、莫大なお金と時間をどぶに捨て、本来のバリューに投資しなかったことを後悔している。「『守り』や『生き残り』といったマインドセットで革新に挑むと多くの困難が待ち受けているだろう。革新には強みやユニークネスに着目しポジティブな成長に寄与する『攻め』のマインドセットが必要だ」とバハルマガ氏は言う。

ここでは紹介しきれないが、他にも「Artificial Influence(人工インフルエンス)」「Enterprise Empathy(共感企業)」「Robot Renaissance(ロボット・ルネサンス)」「Brand Content(ブランド・コンテント)」など、示唆に富む7つの“不確かなトレンド”について語った。

膨大な情報から世界の動きを知り、人間の行動の傾向を見抜くにはどうすればよいのだろうか──。そのヒントについてバハルマガ氏は著作で多くを語っているが、会場では人生で500冊もの著作を世に送り出した、作家で生化学者のアイザック・アシモフの言葉を引用した。──「私は速読者ではない。速理解者だ」。

トレンドを追うのではなく、好奇心をもって世界を自ら理解しようとすれば、自然とライバルに先駆けたイノベーターになれるのかもしれない。

文=岩坪文子

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