中国と日本、給与格差は本当? 英語「バイリンガル」はまだ強い?

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「日本におけるバイリンガル不足は、とくにIT系について顕著です。人事、サプライチェーン、その他の分野以上に、バイリンガル、というか、英語ができる日本人人材が少ない分野です。グローバル企業の日本市場においては、逆に、英語ネイティブの技術者は、日本語が会話レベル程度でも採用に問題はありませんが」

そういえば筆者が米国系IT企業に勤務していたころ、社内リクルーターは、ハーバード、MITなど海外の有名大学に赴いて、卒業見込みの日本人留学生を「青田買い」していた。現地で英語ネイティブと勉強し、ディスカッションやライティングなどを通して教授に認められ、卒業を勝ち取る人材は、英米資本企業でのバイリンガル戦力として当然、魅力的なのだろう。

たとえば南アフリカでは、現状、ケープタウン市が「シリコンケープ」と言われて、テック系の人材の宝庫だそうだ。中国は──?

「実は中国版『シリコンバレー』もあって、深圳市などがその代表格です。同市はテクノロジー系企業の多いハイテク都市で、近年顕著に発展を遂げています」

では日本の外資系企業社員の転職先として、「この先数年で世界を制覇する」とも言われる中国は、視野に入っているのだろうか。

「たとえばAI開発の18年度の国家予算では、中国は日本の5倍の額を投じています。コンピュータサイエンスで修士を持つような高度人材も、日本より多いんです。とくにAI、5G、量子コンピュータなど先進技術の領域でも、エンジニア人口が日本を上回っているのが現状です。

なので、中国企業の日本法人であれば活躍している日本人エンジニアは多くいますが、中国国内拠点で活躍できる方はごく少数でしょう。現地では英語だけでなく中国語が不可欠ですし、競争力の高いスキルセットも必要になります」

求人倍率20倍、つまり、同時に20社からオファーがあるのと似た状況にあるIT系のバイリンガル人材は、いわば、国ごとの給与格差がそれほどなく、ある意味フェアかもしれない「グローバル企業」マーケットにおける覇者だ。しかし、自らの市場価値を「英米資本企業になら」苦もなく証明できる彼らでも、こと中国現地市場への進出に関しては難しいものがあるということだろう。

こう考えると、「バイリンガル」と一言で言っても、われわれ日本人が将来的に身につけるべき「第二言語」は、果たして英語でいいものか、ということにもなる。Forbes JAPANの記事「ジム・ロジャーズの提案『子供が15歳なら韓国語、1歳なら中国語を学ばせなさい』」でも、ジム・ロジャーズが、「絶対英語よりも中国語を学ばせたほうがいい。なぜなら、アメリカは衰退し、中国が再び世界の頂点に君臨することは明らかだからです」と言っている。

将来、世界における日本市場が小さくなっていくに違いない流動的な時代に、ビジネスマンの実学、教養として何を身につけていくべきか。悩ましいところではある。

文=石井節子

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