中国と日本、給与格差は本当? 英語「バイリンガル」はまだ強い?

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ロバート・ウォルターズ・ジャパン広報によれば、グローバル人材市場に限った場合、中国と日本の給与水準にさほど格差がないという。

「厚労省統計など、各国の政府統計などをもとにしているOECD公表のデータを見ると、たしかに日本の給与相場はG7ではイタリアの次に低いことがわかります。しかしこのデータは、幅広い職種・年齢層・働き方を含む、全国の給与データをおしなべた平均値なのです。

実は日本でも、英語力やグローバルのビジネス慣習が身についている、プラス、専門的な経験・スキルのある人材が『グローバル企業』、つまり、外資系企業や、外資系文化のある日系企業に転職する場合の給与水準は諸外国に比べてそこまで低くない、むしろ逆に競争力があると言えると思います」

つまり同社のサラリーサーベイは、日本版でも外資系企業の日本法人、あるいはグローバル化の進む日系企業を対象としているため、給与水準に世界との顕著な格差が見られないと言えそうだ。

中国は昨年、「62%の人材が5%以上」の給与アップ

このサーベイでは、世界的には「デジタル・IT系専門職、危機管理、コンプライアンス・リーガル系の人材への需要が高く、2019年も停滞や減速の予測はない」としているが、中国ではどうなのか。

中国の人材市場の傾向も、AI、ビジネスインテリジェンス、サイバーセキュリティ、バーチャル・リアリティ、IoT、機械学習などの分野の専門人材の需要が高まる見込みだという。また、これまで国内に集中していたeコマース産業が国際化の傾向を帯びていることから、中国でも、英語ができる国際的な人材にますます需要が高まっているらしい。

また2019年は、とくにミレニアル世代の優秀な人材を呼び込み、彼らの転職を回避するため、就業形態の柔軟化や「スマート・オフィス」化を推進する、"デジタルファースト戦略"の採用が進む見込みだという。

このほか同サーベイでは、「2018年、(グローバル企業では)62%の人材が5%以上の給与アップを受けている」、「2019年、(グローバル企業では)36%の人材が6〜10%の給与アップを受けることを期待している」とされている。

IT系のバイリンガル人材への求人倍率は20倍、特筆すべき人材不足

では肝心の日本はどうだろうか。

2018年は日本でも産業種別を問わず、「データ利活用、AI開発や導入、クラウドといったインフラ」関連の求人が急増したという。また、自動運転、スマートサプライチェーンなどIoT技術の開発、導入が進む中、新たな通信インフラ実現に関する求人が目立った。第5世代移動通信システム(5G)の、2020年オリンピックまでの商用化目標といった背景もあってのことだろう。
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文=石井節子

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