中国と日本、給与格差は本当? 英語「バイリンガル」はまだ強い?

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日本企業の給与水準はアジア企業に比べて低い、と耳にすることが多くなった。

「中国版Industry4.0」とも言える国策が強化される中国では、建国100周年までに世界トップクラスの製造強国になることを目標とする「中国製造2025」が実施されている。こうした国策強化にもよって2018年、中国本土の海外投資や技術革新は加速度的に伸び、日経オンラインの記事(2月7日「IT転職 日本の給与、アジアに見劣り」によれば、同国の最高情報責任者(CIO)の給与は、日本の7割高にもなるという。より優秀な人材を確保するために違いない。

また、電子機器メーカー「ファーウェイ」が、「従業員の平均年収は1100万円超」と発表し話題を呼んだことや、日本の新卒エンジニア向けの同社の求人広告では初任給40万円を提示し、大きな注目を集めたことも記憶に新しい。

アジア主要都市と東京、外資系企業間では給与差はそれほどない?

そんな中、グローバル人材に特化した英人材サービス大手ロバート・ウォルターズが、世界各地の給与・採用動向をまとめた2019年版給与調査(サラリーサーベイ)を発表した。同社は世界のグローバル企業に人材紹介を展開する企業で、その分野は金融、製造から小売、サプライチェーンまで多岐にわたる。

中でも同社の日本法人は、厳しい登録試験を通り抜けた登録者と彼らからの推薦によって、大規模な「日英バイリンガル人材データベース」を構築していることが強みといい、ポジションの紹介もバイリンガル人材に特化している。

同社の2019年版サラリーサーベイには、2018年の採用事例をもとに2019年の採用・給与動向の見通しが掲載されている。ところがこれを見る限り、給与水準にアジア主要都市を含む世界、とくに中国との顕著な格差はないように見えるのだ。

OECD公表の給与データには「トリック」がある?

たとえばファイナンス業界、アカウンティング・マネジャーの給与相場でいうと、日本は1000万~1500万円。香港は58万〜80万香港ドル(約810万〜1120万円)。

IT業界のインフォメーション・セキュリティスペシャリストも日本は600万〜2000万円、香港は33万6000〜150万香港ドル(約470万〜2100万円)に遜色ない。

販売・マーケティング業界のマーケティング・ディレクター/マネジャーでも日本は800万〜2200万円、上海は50万〜150万RMB(約800万〜2400万円)、香港は下限が高いものの、それでも100万〜150万香港ドル(約1400万〜2100万円)である。
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文=石井節子

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