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「先見の明」の先見とは、知恵を以ってその先を見抜く見識のことを言う。容易には得難いこのスキルは膨大な情報とその活用、蓄積されたプロセスによって叶う。見識とは積み重ね、繰り返さないと生まれないのだ。


モバイル・インターネットキャピタル 代表取締役社長 海老澤 観は、ベンチャーキャピタル(以下VC)にとって必要なのは、投資プロセス/バリューアッププロセスを進化させることだと言う。可能性を持つ若い企業を上場にまで成長させるために活かされるプロセスとは何か。

100ページの仮説資料が生むプロセス

VCの投資プロセスは大きく分けて4つの工程がある。「案件の流入・受付」「デューデリジェンス(投資先の選定)」「投資先のバリューアップ」「上場(イグジット)」だ。投資の入り口にあたる投資先の選定段階で、モバイル・インターネットキャピタルはあらゆる視点から仮説を立てる。海老澤は言う。

「私たちは年間1,000件を超える投資受付件数があり、その中から10件程度が投資先として選定されます。バリューアップの段階(下図)になると、弊社の個性である実に多様な人材たちが投資先の成長に一役買う。そして、その先にイグジットがあるわけですが、この一連の流れを繰り返していく。イグジットが増えるとその目線が投資選別に反映されるんです」
モバイル・インターネットキャピタルの行なっている投資プロセスのステップ|デューデリジェンスもバリューアップも、多くのケースや実際の過程を経ないと知見がたまらない。フィードバックを重ねることで、投資プロセスの進化につながる

ポイントなのは、その徹底ぶりだ。マネージングディレクターである元木 新はこう説明する。

「投資の際の仮説は重要です。一つひとつの案件で〈思考の跡〉として残した70ページから100ページもの量に及ぶ情報を振り返り、これを社内で共有し、さらに知見を重ねる。そして仮説を基に『この会社の事業計画はこういう風に推移するのではないか』という数字を出す。この流れはかなりの労力を必要としますがこれも必要なプロセスです。ベンチャーキャピタリスト個人に情報が集中しやすいのが私たちの業界の特徴です。しかしせっかく仮説と実証を回しても個人にとどまると価値を失う。チームで行うこのブラッシュアップが私たちの最大の個性ですね」(元木)



バリューアップでの成功体験を含めた仮説検証は次の案件に対するものの見方に反映されてくるため、自分たちでプロセスを磨いて投資の精度を上げていくことが重要になる。

多くのVCの中でも、徹底したチームでの研鑽の仕組みはモバイル・インターネットキャピタルくらいかもしれない。加えて興味深いのは、その現場に、個性的なバックボーンを持つ人材が集まっていることだ。

【連載】注目企業と先見のVCが組み生まれる上場へのベストプラクティス

一人前のキャピタリストの多彩な過去

モバイル・インターネットキャピタルは、チーム型のベンチャーキャピタルだ。現在、マネジングディレクターの元木以下、6名のキャピタリストがチームで動く。その顔ぶれが非常にユニークだ。前職を列記すれば、大手通信会社のSIer、証券会社、大手百貨店から情報サイトのデータ管理へ移った者、シンクタンク、そして公共サービスのPMなど、多岐にわたる。もちろん、キャピタリストとして一人前であることは言うまでもない。

むしろ個々の持つ背景が投資のプロセスで役に立つ。例えば、あるデータマーケティング会社のバリューアップ期では、マーケ専門の言葉や発想など「翻訳」が必要になることが多い。また、あるシステム系の会社では、特化した個々の技術がどれだけ凄いことなのかが知識がないゆえに気付かない。感じるのは、仮説と実証において発揮される経験や多視点といった専門性がまず欠かせないこと。そして様々な業界の風土に対応できる知見のある人物が必要であると言うことだ。


「ベンチャーキャピタルの業界で、テクノロジーの知見に精通したファンドは圧倒的に少ないのですが、私たちがそのフィールドでも大いに力を発揮できているのは、ひとえに人材と言えるかもしれません」(海老澤)

二人三脚の信頼関係もプロセスの一環

モバイル・インターネットキャピタルが投資する企業は非常に魅力的であることが多い。日本を代表するBtoB系のVR企業、越境ECをたった一つのJava Scriptで可能にする企業といった具合に。価値あるコアバリューを持つ会社に投資するスタンスを持つ同社に、決め手となる考え方があるのかを聞いてみた。

「例えばAIという分野にフォーカスする時、産業全体や自分自身にまで幅広く視野を広げます。その結果、たとえ投資機会が今というタイミングでなくても、仮に3年後でも、しっかりとメンテナンスをして私たちの投資の間尺になるまでしっかり待ちます。時間をかけて投資機会を待つのもプロセスの一環です」(元木)

常に多数の案件を検討し、継続的にコンタクトする企業を精査することで、潜在的な原石の元が見つかるのだという。仮説検証のプロセスが機能することで、結果的に原石になる企業しか残らないという流れだ。

そもそもベンチャーキャピタルは、投資の成否のサイクルが5年、10年と長期にわたる。大前提として、投資先との関係は良いことも悪いことも共有し合える人間関係が必要になる。「気持ちよくディスカッションしてもらうことが、バリューアップ期の根幹になる」(元木)という関係は、ベンチャーキャピタリストがすなわち個性そのものであるという見方もできる。選定、仮説実証の対象期は冷静に、そしてバリュー期はともに汗を流すというように。

同社は近い距離感で得られる細かい情報までもチームで共有される。それもプロセスだ。過去の様々な情報から、例えばこういう事業はイグジットへ少し時間を要すため、具体的な投資スキームの時点でその要素を加味しておくなど、個々に細かい対応につなげていく。

VC業界の中で注目される存在に

冒頭で「先見の明」と記した。魅力ある企業を上場に向けサポートするモバイル・ベンチャーキャピタルが、あたかも〈企業を見る目がある〉という印象からだ。しかし先見の裏には、周到なプロセスが存在した。

綿密なデューデリジェンスの手法を作り上げ、強みとなる背景を持つキャピタリストたちによって企業は育てあげられる。チーム制により共有される情報は深みを増し、実績を生み続ける。それがあたかも「見る目がある」と感じたのだ。

先見のベンチャーキャピタルと言い換えよう。それがモバイル・インターネットキャピタルの正しい見方だ。

モバイル・インターネットキャピタル
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連載「モバイル・インターネットキャピタル」
── 見えている経営者と道を示すVC ──

#1公開中|元マジシャンがVR界の風雲児となったゆえん
#2公開中|たった一行のJavaScriptで日本のECを世界企業に変える野望
#3本記事|“先見”のベンチャーキャピタルが持つ独自のプロセスに迫る

Promoted by モバイル・インターネットキャピタル text by Forbes JAPAN 坂元耕二 photographs by Setsuko Nishikawa

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