なぜ時代は女性ファウンダーとビジョナリー・リーダーを求めるのか|WSLab 堀江愛利

フォーブス ジャパンは3月8日の国際女性デーを皮切りに、「世界のセルフメイド・ウーマン100人に聞く『あなたの“わくわく”は何ですか?』」企画を開始。

セルフメイドウーマンとは「自力で道を切り拓いた女性たち」のこと。なぜ彼女たちの「わくわく」に着目したのか、そしてビジョナリーな女性リーダーたちをもっと増やすにはどうすればよいのか。ヒントは、シリコンバレーで女性起業家のアクセラレーターを運営する堀江愛利氏の言葉にありました。3回にわたる連載でお届けします。(第1回はこちら


2017年、シリコンバレーで女性の起業を取り巻く環境に変化が訪れました。多くの女性たちがセクシャル・ハラスメントや差別の体験を打ち明け、シリコンバレーで有力な男性たちが次々と職を追われました。しかし、#Me Tooムーブメントはお金の動きにはそれほど大きく影響を与えていないようです。

M&A、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル(以下、VC)のデータベースであるピッチブックの調べによると、昨年(2018年)、VCによる投資総額850億ドル(約9兆円)のうち、女性創業者が受け取った金額はわずか19億ドル(約2000億円)。わずか2.2%程度です。

非常に少ない割合とはいえ、2016年は1.9%であり、徐々に改善は見せてきているとも言えます。起業家の資金調達に重要な役割を果たすベンチャーキャピタリストは92%が男性、女性はわずか8%です。

しかし、VCファーム、ファースト・ラウンド・キャピタルが自社の投資先を調べたところ、女性創業者がいる企業は、男性のみで創業された企業に比べて63%パフォーマンスが高く、さらにカウフマン財団の調べでも、女性のIT起業家は男性のIT起業家よりも平均で35%高いリターンを生んでいるとの結果が出ています。

総じて近年、起業希望者は減少傾向にありますが、ベンチャーキャピタルの動きは活発です。既存の有力企業がイノベーションファンドを立ち上げたり、コーポレート・ベンチャー・キャピタルを持ったりといった試みも行われています。そういった動きにも関わらず、女性起業家に中々お金が流れないのは、それらが圧倒的に男性に偏ったエコシステムの中で行われているからです。

2018年、VCファームのイルミネート・ベンチャーズが起業家に行った調査によると、40%以上の女性起業家が「同姓の投資家が限られていることが成功に向けての障害になっている」と答え、65%以上の女性起業家が、「女性であることが不利である」と答えています。起業したい女性が自身のアイデアを訴えても、投資家の男性たちは、彼女たちが解決したい問題自体が分かりません。

例えば、生理や妊娠など女性の体や健康をマネジメントしたり課題を解決するための「フェムテック」は最近注目の分野ですが、約1時間の貴重なピッチの時間において、最初の30分がエデュケーションで終わり、結局プロダクトのことを話せないまま終わることさえあります。

総務省の「就業構造基本調査」によると、日本では、20~24歳を除きすべての年代で男性より女性の起業家数が少なくなっています。女性の中では、35~39歳が最も多く、子育て期の女性にとって「起業」がキャリアの一つの有効な選択肢となっていることが推察されます。シリコンバレーでも同様です。

しかし、一般的なアクセラレーターが提供するプログラムは、3カ月ほどスケジュールを拘束されることがほとんどです。一方起業を考える女性たちは、結婚していたり、子どもを持っていたりします。そういった状況で、特に子どもを置いて3カ月もプログラムに参加することはできません。現代社会は、ビジネスのアイデアを考えて、投資を受けて、起業をして、といった全ての流れが男性中心に作られています。
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構成=岩坪文子

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