孫正義が「物流の未来」を託す32億ドル企業、Flexportを創った男

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Petersenは、兄のDavidが中国から介護用浴槽を輸入するビジネスを手伝った経験から、ソフトウェアを用いて物流業界を近代化させることに商機を見出していた。

「彼は貿易に強い関心を持っていた」とRedditの共同創業者でYコンビネーターの元パートナーであるAlexis Ohanianは話す。Ohanianは、自身が設立したVC「Initialized Capital」を通じてFlexportに出資している。

Petersenは、「企業がFlexportのソフトウェアを使って試しに貨物を10個でも管理してみれば、スピードやコストを最適化することができ、その価値を理解できる」と胸を張る。

サウンドシステムメーカーの「Sonos」もそうした企業の一つだ。Sonosでグローバルオペレーションの責任者を務めるPatrick Stuutによると、最初はスタートアップを採用することに抵抗を覚えたという。「彼らは時間をかけて価値を証明してみせた。スタートアップにもチャンスを与えることが私からのアドバイスだ」とStuutは話す。

Flexportは、今回調達した10億ドルを人員補強や海外での専門家の採用に充当する予定だという。他にも、物流倉庫や飛行機を増強するという。同社は、顧客に在庫ローンを提供する「Flexport Capital」を傘下に持ち、今後は顧客の配送パターンをもとに分析や予想するアナリティクスツールの提供も計画している。

孫正義が狙うアマゾンの競合の設立

ソフトバンクはポートフォリオにFlexportを加わえ、ウーバーの配車とデリバリーサービス、ボストン・ダイナミクスのロボットと組み合わせてアマゾンの競合サービスを作ろうとしているようにも見える。実際、ソフトバンクで今回の投資を担当したRonenは、「そうした見立ては正しい」と認めている。

「以前、ニューヨークで車を購入しようとした際、ディーラーは私が欲しい車両が現在どこにあるのか全く把握していなかった。アマゾンでペーパータオルを注文すれば、配送中の商品がどこにあるかを常に見ることができる。アマゾンのエコシステムの外であっても商品が迅速に、安いコストで配送できるようになるべきだ」とRonenは話す。

「彼らのネットワークが拡大すればするほど効率性が高まる」と俳優で投資家のアシュトン・カッチャーは話す。カッチャーも、Flexportに出資している。

Petersenはソフトバンクの孫と、自宅があるサンフランシスコと東京で会い、設立間もないアリババに出資した際の話を聞いたという。それによると、孫とアリババ創業者のジャック・マーは、取引手数料を徴収せずに規模の拡大を優先させることで合意したのだという。

Petersenはこれにならい、あらゆる手を尽くしてグローバルネットワークの拡大に専念しているという。現在、Flexportは輸送費を徴収しているが、ソフトウェアは無料で提供している。

「孫から直接話を聞けたことは貴重な体験だった。また、スリッパを履いて10億ドル規模の資金調達について交渉することは実に楽しかった」とPetersenは語った。

編集=上田裕資

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