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ジャーナリスト・評論家の佐々木俊尚

読者の「ペルソナ」をどうやってつくる?

続いて、『レイヤー化する世界』などの著書をもつジャーナリスト・評論家の佐々木俊尚と桑原、そして今回2位に輝いた『1分で話せ』を編集したSBクリエイティブの多根由希絵によるトークセッションを開催。佐々木が、2冊が生まれた経緯に迫った。

『1分で話せ』は、 Yahoo!アカデミア学長の伊藤羊一による「伝え方」の指南本。「1分で語れない話は、どんなに長くても伝わらない」という主張のもと、上司や取引先にきちんと理解される話し方を紹介している。


伊藤羊一『1分で話せ』

セッションで面白かったのは、2人が想定する「読者」の考え方だ。実は、桑原は『the four GAFA』を日本で発売する際、原著にはないオリジナルのイラストを追加したという。

本書でGAFAを説明する際のたとえに使った、新約聖書『ヨハネの黙示録』に登場する四騎士のイラストがそれだ。聖書にあまり触れない日本人には、「四騎士」がイメージしづらいと想定しての判断だ。

「社内の人々にたくさんの意見を聞いて回り、掲載に踏み切りました。騎士のイラストを載せるのはちょっとオタクっぽく、本のイメージを崩してしまわないか心配で、頂いた意見も賛否両論でした。

ですが、この本を実際に読んでくれそうな人ほど、載せるべきだと言ってくれた。こうした意見を聞いているうちに、むしろ多少オタクっぽくてもカッコよさを重視すべきだとわかったんです」

佐々木も「著者や編集者に迷いがあるまま発売された本は売れにくいですよね。迷いが『味』になる場合もありますが、多くの読者にとっては消化しづらい本になってしまう」とコメント。社内で意見を聞いているうちに日本で狙うべき読者層がハッキリと固まり、彼らに向けた本づくりができたということだ。


SBクリエイティブの編集者 多根由希絵

対照的なのは、多根だ。著者に依頼する前から読者のペルソナをかなり綿密に想定していたという。「少し考えただけではすぐに対象読者が曖昧になってしまうので、『なぜ読者が多くの本がある中でこの本を手に取らなければならないのか』をしっかり練る必要があります」と多根。

今回、多根が想定したペルソナは「『お前の話はわかりづらいor長い』と一度でも言われたことがある人」。これだけ聞くとほとんど全ての人が当てはまるように思えるが、多根は「でも、その中にもいろんなパターンの人がいますよ」という。

「例えば『話がわかりづらい』といわれていることに、自分では気づかない人もたくさんいますよね。そういう人にも届くように、本をつくりました」

『1分で話せ』では、前半で簡潔にしゃべっている人とそうでない人を見開きイラストで対置させている。読者は、「話がわかりづらい人」の特徴を見ているうちに、自分もその一人だと気づくのだ。

これには、佐々木も納得。「以前あるイベントにて、30分のイベント時間のうち、モデレーターの方が20分も話し続けたことがありました。ご本人は後日、『緊張のあまり話しすぎてしまった、失敗した』と。

『聞く人のことをちゃんと考えている』と思っている人でも、ダメな話し方をする人はたくさんいますよね」

最後に、佐々木が「これからどういう本をつくりたいですか?」と質問にすると、桑原は「その本をきっかけに新たな棚がつくられるような、既存のジャンルに当てはまらない本をつくりたいですね」と回答。

多根は、「『学問のすゝめ』のように、世代を超えて長く読まれ続ける本が理想です」と、それぞれの書籍に対する想いを話した。

読者が価値を感じる書籍の裏には、著者や編集者の強いこだわりがある。こうした思い入れを知ってからビジネス書を読むと、これまでとは違った側面が見えてくるのではないだろうか。

文=野口直希 写真=フライヤー提供

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