ビジネス

2019.03.10

2018年、読者が最も評価したビジネス書は? 気になるトップ10から製作の裏側まで

東洋経済新報社の編集者 桑原哲也

ビジネスパーソンにとって「最も価値があるビジネス書」とは何なのか? 1年で約6000冊もの新刊が出版されているビジネス書。話題になるものもたくさんあるが、それが自分にとって本当に価値があるのかどうかは、なかなかわからないものだ。

そこで「ビジネス書を評価すべきは、ビジネスパーソンではないのか?」をコンセプトに、読者=ビジネスパーソンが選んだ本をランキングにするのが、「ビジネス書グランプリ2019」だ。本の要約サービス「flier」を運営するフライヤーが、Forbes JAPAN、グロービス経営大学院と共同で開催している。

2月19日、東京のパレスサイドビルで、ランキングの表彰式とトークセッションが開催された。気になるランキング結果、そして上位の本がヒットした理由を紹介しよう。

キーワードは「不安」。2018年、最も「価値がある」と思われたビジネス書は?

早速、2018年に最も評価されたビジネス書トップ10を紹介しよう。

1位:スコット・ギャロウェイ『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』
2位:伊藤羊一『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』
3位:樺沢紫苑『学びを結果に変えるアウトプット大全』
4位:田中修治『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』
5位:ひすいこたろう、大嶋啓介『前祝いの法則』
6位:フレデリック・ラルー『ティール組織』
7位:坪田信貴『才能の正体』
8位:ユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス(上) テクノロジーとサピエンスの未来』
9位:箕輪厚介『死ぬこと以外かすり傷』
10位:堀江貴文、落合陽一『10年後の仕事図鑑』

あなたのお気に入りの本は、何冊あっただろうか。


フライヤー代表取締役CEOの大賀康史

昨年は西野精治『スタンフォード式 最高の睡眠』(2位)や、堀江貴文『多動力』(6位)など、「自分磨き」に関する書籍が多かったが、今年は多様なジャンルの本がランク入り。

フライヤー代表取締役CEOの大賀康史は、この投票結果から見えてくる読者の感情を、「不安」というキーワードで説明する。

「2018年はAIがぐっと身近になり、テクノロジーの進歩でビジネスのスピードがますます加速するといわれました。これはつまり、自分のスキルが時代遅れになるスピードも速まるということ。

ランキングを通して見えてくるのは、時代の変化に対する『不安』。そして、それに前向きに対処しようとするビジネスパーソンの姿ではないでしょうか」


スコット・ギャロウェイ『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』

それを大きく反映しているのが、グランプリを受賞したスコット・ギャロウェイ『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(以下、『the four GAFA』)だ。この本はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンが大きく発展した理由を解説する一方で、生活に浸透した彼らのビジネスからは誰も逃れられないことを示している。

大賀は、「ビジネス構造を塗り替えるGAFAからは誰も離れられないからこそ、教養として読まなければならない本として支持を集めたのではないでしょうか」と解説した。

時代とともに、いまの潮流をつくった

一方、『the four GAFA』ヒットの理由について、少し違った見解を示したのは、本書の編集を務めた東洋経済新報社の桑原哲也だ。実際に本を世に送り出した桑原の目には、まるで世の中の潮流が『the four GAFA』に合うように変化していったように映ったという。

「いまでは生活を侵略するほどの影響力をもつ企業としてネガティブに語られることも多いGAFAですが、本書の出版時は必ずしもそうではありませんでした。

この本が出版されてからは彼らの問題点がより指摘されようになり、『GAFA』という言葉は流行語大賞も受賞しました。本書は、この潮流をつくった一端になったと思っています」

グーグルやフェイスブックをテーマにした本はこれまでもたくさんあったが、『the four GAFA』ではこれらの企業を、「情報を一手に集めて一部の貴族とたくさんの農奴を生み出すもの」として、懐疑的な視線を投げかけていることが特徴だ。

この懸念は、現実になっていく。本書が日本で発売されたのは、2018年7月。その後、9月末にフェイスブックでの大規模な情報漏洩が発生。彼らが大量の情報を扱うことに、批判の声がどんどん大きくなっていった。

まさに『the four GAFA』の指摘と、世の中の動きがぴたりとマッチした1年だった。あるいは、『the four GAFA』によって世間のGAFAに対するスタンスが決まっていったのかもしれない。
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文=野口直希 写真=フライヤー提供

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