ビジネス

2019.03.08

52カ国に展開 産業装置を「世界一のブランド」に

インダストリア社長 高橋一彰


industriaの開発精神が生み出した製品たち

自社開発で試行錯誤を重ねるうちに生まれたのが、前出の「FILSTAR」だ。入浴中、ゴミが浴槽に沈むことから着想を得て、2年の歳月をかけて実用化した。

最初に持ち込んだのは、トヨタ自動車だ。

「わが社のブランド価値を高めるために、お客様の名前を利用したかったんです。世界一の工場で使ってもらえれば、世界一のブランドになるんじゃないかと」

実験データを求められるなど数々の難関はあったが、1年後にはトヨタの工場への「FILSTAR」採用が決定。そこからはトントン拍子で、トヨタ系のアイシン精機やデンソー、さらに他の自動車メーカーにも導入が決まった。「トヨタさんの名前を出したら、みなさん話を聞いてくれた」と、狙い通りの展開になった。

いまでは主要な国内自動車メーカーが採用済み。たとえば車のボディは塗装前に巨大なプールに漬けて洗浄するが、そのプールの浄化システムの7割に「FILSTAR」が利用されている。

現在、高橋は「FILSTAR」を中心にした、臭いや菌まで除去できる水のリサイクルシステムを開発中だ。完成すれば、工場以外の場所でも利用が見込まれる。「世界には、飲み水を汲みに行くために、学校に行けずに毎日8時間歩いている子もいる。そういった子どもたちを学校に通えるようにすることが私たちのゴールです」

高橋には、もう一つ夢がある。現在の工場を改装して、全面ガラス張りにすることだ。工場の前は、小学生の通学路。ガラス張りにすれば、職人の働く姿を外から見ることができる。

「この地域で、『職人』を将来なりたい職業の1位にしたいんです。ものづくりには、それだけの魅力があると信じています」


高橋一彰◎1973年、入間市生まれ。98年に入社し、2003年、ランニングコストゼロの金属片などをろ過するフィルター「FILSTAR」を発表。05年、代表取締役社長に就任。

インダストリア◎金属加工を行う下請け会社であったが、現在は「industriaブランドの確立」「産業界のルイ・ヴィトン」という目標を掲げて世界を相手に事業を展開している。

文=村上 敬 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN ニッポンが誇る小さな大企業」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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