子どもの習い事に高額タクシーを使う女性たちー平成の終わりに世代論を再考する(後編)

ニッセイ基礎研究所 主任研究員 久我尚子

新元号が2019年5月にスタートする。30年続いた平成は、多くの出来事を生み、そして終わろうとしている。元号が変わるこのタイミングで、時代を構成する個性的なキャラクター揃いの各世代について考える企画、その後編(前編はこちら)。

ニッセイ基礎研究所で消費行動の専門家として活躍される久我尚子に、平成の振り返り、そして今回は女性にスポットをあててお聞きする。

平成は「女性の時代」と言えたかもしれない

──前編では、若者たちの価値観と、筆者もそうである上司世代とのギャップに考え込む瞬間がありました。後編ではまず、平成を振り返って、どんな時代だったかをお聞かせいただけますか?

キーワードを上げれば、「家族」「女性」「若者」「ネット社会」の4つでしょうか。家族については、核家族という言葉は以前からありますが、さらにコンパクト化したということ。未婚率も上がり、高齢者の方の単身世帯が増えるといった中で、売れている商品がそれに合わせてコンパクトになっています。

野菜の購入量は減っているのにカット野菜の売り上げが伸びていることや、3枚入りの食パンの登場、レトルトカレーの売上げが箱のカレールーを超えたといった身近な商品もその傾向を表しています。

──女性とは、具体的にどういうことが言えるでしょうか。

平成は働く女性が増加した時代と言えるでしょう。今の42歳くらい(団塊ジュニア付近)から大学進学率が高まり、加えて、90年代後半(平成では11年)に労働者派遣法が改正され派遣業務の対象が原則自由化となり一般職の採用が絞られたことも影響し、総合職として働く女性が増えました。どんどん外に出る女性、経済力が増す女性が増えたんです。雑誌がその姿をよく表していますね。

90年代からベビー向け、主婦系雑誌が出てきて、「主婦でもおしゃれに」という風潮が生まれ、2000年からは細分化とともにママタレントが台頭したことで、「母としても女性としてもおしゃれ」であるとか、働くキャリアママのための雑誌といった具合になりました。

そして、パワーカップルの登場です。男性と同じように稼ぐ女性が増えると、その消費力はとても高く、都心マンションが売れる要因のひとつとなっています。

──社会が変わってきているから女性も変われていると?

女性が働くことが当たり前になってきている世代の台頭もあるでしょう。今の30代くらいから、男子も家庭科が必修の世代なのですが、この世代はそもそも男女平等という意識が強く、イクメンとかイクボスという言葉すら古いと感じています。

それは一部社員教育にも現れていて、私の上司の世代だと、働いているお母さんの立場や、仕事との両立のサポート、マネジメントを教育されていたのですが、それが今の時代、部課長世代だと、共働きだからということで女性だけでなく男性もケアしないといけない。そういう時代になってきています。

──共働きが増えるということは、働きやすさということに直結しますね。働き方改革が進めばさらに女性の経済力に期待できる面もあるのでしょうか?

女性の経済力はまだ増していく過渡期かなと考えています。可処分所得が増えればこれまでのモノ消費とか高額消費が増える可能性もあると思います。女性はM字カーブ(*)を描く傾向がありますよね。結婚、出産で一時的に下がるそのカーブは、底上げされてきているもののまだその傾向は残っています。

実は働きたいという希望がある人を足し合わせると、M字カーブの凹みは、ほとんど解消されているんですね。なぜ働いていないのかというと、出産育児のためなどで一回仕事を離れると、離職前の給与水準や、希望する仕事が見つけにくいなどがその理由。ですから、そういう方々がいざ働きに出て台形(正常なカーブ)になっていくと、これまでの消費が単純に増える可能性はありますね。

(*) M字カーブ|女性の労働力率(15歳以上の人口に占める労働力人口の割合)が、結婚や出産などの年代に一時的に低下し、その後育児を経て労働に復帰する時期に再び上昇する数値の形がM字を描くこと
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文=坂元耕二 写真=西川節子

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