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多くの女性たちは30年、40年生きてきた中で様々な壁を作っています。そこで合宿の冒頭で「5歳児を思い出してください」というエクササイズをしています。子供のころの、持って生まれた感性を思い出すことによって、「私ってそういうのが好きだったよね」ということが蘇って、皆さん、裸足になったり、服を着たままプールに飛び込んだりと、夢中で遊んでいます。そうして一度壁を取り払ってみることが必要なのです。

「壁」という話で言うと、日本の高学歴の女性は自分の学歴のことを一切言わない人が多いですね。そして、自信なさげです。自分が東大出身だというと、周りが敵対意識を持って彼女たちにつらくあたる、そういう経験をしてきている。わざと頭が悪いふりをしろ、と教えられてきたという女性もいました。

また、「他の女性が怖い」というのもよく聞きます。頭がよくてスマートで、群れたりこびへつらったりしないと、他の女の子たちからいじめられた経験があって、なんとなく女性が怖い、と。起業家のアクセラレーターのコースでもよく聞かれます。

女性だけでなく、男性もそうです。日本の男性陣に「イノベーションを」というと、「いやぁ、うちの課長が何というか」と言われます。「できない」と思っていることだらけです。しかし、本当にそうでしょうか。それを一つずつ外していく作業が必要です。ダメ、と思っていることを実際に紙に書いてみて、本当にダメなのか、ひとつひとつ検証していく。昔に起こったことが、また起こると思い込んでいるだけではないでしょうか。99%想像ですよね。解決方法があることの方が多いです。

「壁」を取り払ったら、次に自分にとって何が最も大切な価値観なのか気づくことです。そのことで、それ以外のどうでもよいことに時間や労力を奪われなくなります。

例えば、こういう女性がいました。

メンタルヘルスに関わる公的機関でマネジメントをしていて、心に病を抱えている人を施設に入れて、治療が終わったら出所させる、ということをやっていらっしゃいました。

「もっと良いやり方がある、変えなければならない」と思っているのですが、「実際にあなたがやりたいことは何?」と聞いてみると「えーーっと」と資料に目を移す。「ここはビジョナリーなグループだから、『えーーっと』はないでしょ、と。「えっと」を抜くだけでも良くなりましたが、「不安そうに言っているのはなぜなの?」と聞くと、泣き出しました。

「自信がない」と言います。「私では絶対に無理。『変えよう』と言っても、あそこの部署がこう言うし、あの部署がこう言うし」と。抱え込んでいることが急に出てきました。そこで、「あなたにとって一番大切なことは何?」と聞いていくと、彼女にとってもっとも大切な価値観が分かってきました。

子どもの頃、母親が病気がちで、外からは分からない病気なので「あなたのお母さん、いつも楽しているわね」と言われて嫌な思いをし、「自分が守ってあげなければ」と思ったといいます。「弱い人を守りたい」という正義感が彼女のコアで、それに気づき、その価値観に沿って行動することで「満たされる」。その他の障害物はとても小さなものに見えてくる。

しかし「軸」がないと小さなことに振り回されてしまう。怖いけれど、勇気を持って行動できるようになります。言葉は大げさですが「命をかけてでも守りたいもの」がはっきりすると、人は強くなれるのです。

シリコンバレーで言うところの「You Have to Have a Passion」なのですが、「Passion」は日本語で言うと、これも「ワクワク」だと思います。なぜその「ワクワク」が消えているのかというと、自分がなぜ「ワクワク」したのか忘れている、もしくは気づいていないからです。

起業家のプログラムではセルフ・デベロップメントの時間は限られていますが、起業家として芯のところをくすぐるために、同じようなセッションを行っています。起業家にとって「芯」がしっかりしていれば、その事業がダメになっても、次に挑戦できる。ピボットも迷わずできる。

コアがないと、周りに言われる度に流されたり、一つの事業がダメになると自分が失敗したようにすごく自信を無くしがちです。しかし、自分のコアがしっかりしていれば、事業は新しいのをのせればいい、その積み重ねなので、「失敗」はありません。

「ワクワク」は頭で考えてもなかなか出てこないので、5歳児エクササイズのように、体で感じる取り戻し方がおすすめです。それがあなたのバリューやビジョンにつながっていくのです。

次回は、女性起業家を取り巻く環境について、客観的データを使って詳しく見ていきたいと思います


堀江愛利(Ari Horie)◎Women’s Startup Lab創業者兼CEO。米CNNビジョナリーウーマン、Marie Claire誌「世界を変えている20人の女性」に選出、安倍首相訪米時の首相主催晩餐会のMCのほか、SXSW 等に登壇。主宰する「Women’s Startup Lab(WSLab)」は、イノベーションの聖地・シリコンバレーで、アクセラレータープログラムと呼ばれる起業家を養成するプログラムを運営。男性中心のビジネス環境を改革し、女性がビジネスにおいてより飛躍を遂げることができる場を創生することで、男女が共に活躍できる革新的なビジネス環境を構築することを目標として活動。

構成=岩坪文子 イラストレーション=Kyle Hilton

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