ビジネス

2019.03.18

バリ島にエコホテルを、日本人夫婦が建設を進める理由

一般社団法人Earth Companyがバリ島に建設中のエコホテル


──宿泊先までアースカンパニーの世界観を築くということですね。

明日香 : 私たちのビジョンを話すとき、きれい事と言う人もいます。「あくまで理想でしょ?」「それって実現可能なの?」などと。しかし、実現してしまえば、説得力のある現実になります。

そうした具体例が必要だと感じていたタイミングで、エコホテルの建設にピッタリな土地が見つかりました。20年近く前から、サステナブルコミュニティを立ち上げることは夢の1つだったので、さまざまなピースがはまったと感じる瞬間でした。

──正しいと思うことを突き詰めていく、お二人のすべての姿勢が一貫していると感じられました。アースカンパニーのめざす「次世代に残せる未来の創造」について話をうかがえれば。

知宏 : 最近、深く刺さった言葉に「Are we being a good ancestors?(私たちは良い先祖でいられているのでしょうか?)」というのがあります。この短いセンテンスに、自分の行動は子供だけでなく孫、それ以降の子孫にとってもインパクトがあることなのだ、ということが凝縮されています。

遠い未来に「あの人たちは、地球や子孫のために良いことをしていたよね」と言ってもらえる行動をしているのか、僕たちは日々自問自答しています。このような長期的な視点を持って事業をしたり、自分の人生を切り開いたりしていきたいですね。

明日香 : 加えて「Are we being good parents?(私たちは良い親でいられているのでしょうか?)」ということも考えます。

今日もインタビューの場に子どもを同席させてもらっていますが、それは仕事のために子どもを排除するのではなく、子も受け入れるもっと寛容な社会をつくっていきたいというメッセージを発信したいからです。なぜなら、子どもたちこそ「未来を創る次世代」だから。もっと子育てを許容しえる社会にできればと思います。

──次世代を育成するアースカンパニーの事業ですが、いちばん身近なお二人のお子さんにはどのような想いを持って接しているのでしょうか?



明日香 : ジム・コリンズというアメリカの高名なビジネスコンサルタントが著した「Good to Great」(邦訳「ビジョナリー・カンパニー 2 飛躍の法則」)という本がありますが、その中でGood to Greatな企業で在るためには、以下の3つのサークルが交差するところを事業にすることを提唱しています。

・好きなこと、情熱を持てること
・得意とすること
・お金を稼げること

さらに最近は、4つ目のサークルがあると言われています。それは「社会や世界に求められること」、すなわち自身の「役割」です。

これら4つのサークルが重なる真ん中にあるのは、「IKIGAI」(日本語の「生きがい」から。海外では天命のニュアンスで使用される)とされ、いま海外でも注目されています。

子どもたちには、どんな形でも自分の情熱や社会における役割を見つけてもらうことができたら嬉しいです。同時にそれは、あらゆる人や企業や国家や国際社会にも、私たちが願うことなのです。



濱川明日香◎Earth Company 代表理事。ボストン大学卒業後、プライスウォーターハウスクーパーズに勤務。ハワイ大学大学院にて太平洋島嶼国における気候変動研究で修士号取得。2014年、夫の知宏と一般社団法人Earth Compnayを設立。同年、ダライ・ラマ14世より「Unsung Heroes of Compassion」を受賞。2017年「Asia 21 Young Leaders」に選出。2018年、Newsweek誌で「世界で活躍する日本女性」に選出される。

濱川知宏◎
Earth Company マネージング・ディレクター。ハーバード大学卒業後、NGOスタッフとしてチベット高原で働いたのち、ハーバード大学ケネディ行政大学院で修士号取得。ユニセフ、セーブ・ザ・チルドレン、英国大手財団CIFFにて、子供の保護・教育に重点を置いたプロジェクトの企画推進・評価等を行う。現在はNPO法人コペルニクの最高戦略責任者を兼務。2014年、妻の明日香と共にダライ・ラマ14世より「Unsung Heroes of Compassion」を受賞。

連載 : #醸し人
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監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり 取材協力=Nagatacho GRID

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