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2019.03.06

「この壁を食べてみませんか?」都営地下鉄の壁とチョコが異例のコラボ。マニア向け戦略の理由とは?

Toei Détail

まさかのコラボが実現することがある。絶対に出会わないであろう、2つの点…。

たとえば、普段使う地下鉄の壁とチョコだ。

都営大江戸線や都営浅草線などの路線を持つ東京都交通局は、運営する12駅をピックアップし、それぞれの壁、天井や床のデザインをモチーフにしたチョコレート「Toei Détail」(トエイ ディテール)を期間限定で販売することを3月4日に発表した。たとえば、都営三田線内幸町駅の改札階の床、都営大江戸線麻布十番駅のホームの壁、都営浅草線馬込駅ホームの階段、などマニアックなラインナップが揃う。

チョコレートの監修は、日本を代表するショコラティエの三枝俊介(パレ ド オール オーナーシェフ)が担う。異色の組み合わせが実現した背景を東京都交通局の担当者に聞いた。

チョコを通じて、歴史を感じる



──なぜ、壁、天井や床をチョコのデザインにしたのでしょうか。

普段の生活で地下鉄の壁や床に気をとめることはないと思います。一般的には目につかない部分です。しかし、ふと足を止めて壁や床に目を向けてみると、それぞれディテールの違いが見えてきます。例えば都営浅草線は建設されて約60年、壁から歴史を感じられます。

そのようにお客様に少しでも都営地下鉄の各駅の違い、そして歴史を知ってもらうために、このような企画をしました。

──チョコとなった12駅はどんな基準で選ばれたのでしょうか。

準備の段階で各駅をまわり、どの壁や床がチョコのデザインにしたら面白いか考えました。同じような柄は避け、特徴あるデザインのものを選びました。


モチーフとなった駅の壁や床

──以前にも、東京都交通局のあらゆる「音」を使用したPRをされていました。地下鉄大江戸線「音声誘導チャイム」、都電荒川線「7000形走行音」、都営バス「ドラム研磨音」などマニアックな音を録音し、アップロードしています。今回のも合わせて、一見「一部の利用者にしか刺さらないのではないか」と思わせるような戦略をうっているのはなぜでしょうか。

電車のPRは他の一般的な商品と比べて難しい部分があります。お客様はその路線を好きだから使っているのではなく、仕事場に近いから、家に近いからという理由で使っています。新規顧客を開拓するよりは、普段から使っているお客様にどうアプローチするのかを考えています。そして少しでも東京都交通局の良さを知ってもらうために、このような企画を立ち上げました。だからこそ、細部にこだわっています。

また、あらゆる音を集めた「Sound of Toei」も今回の「Toei Détail」も「PROJECT TOEI」の一環です。「PROJECT TOEI」は、それ以前のPR方法を大幅に見直し、よりビジュアルをメインにした発信に切り替えています。動画を出したり、記事の写真にこだわったり、少しでも話題になることを目指しています。

──今後、選ばれた12駅以外の「チョコ化」は実現されるのでしょうか。

今のところ、その予定はありません。


歴史あるデザインから生み出されたチョコレート。食べるだけではもったいない気もする。チョコを手に取りながら、実際の壁や床を探し一緒にインスタにアップする、といった楽しみ方ができそうだ。都営地下鉄ユーザーのパートナーがいる場合は、ホワイトデーに一緒に壁や床探しをするのも良さそうだ。楽しみ方を考えるだけで、東京都交通局の世界に引き込まれた気持ちになった。

販売期間:平成31年3月11日(月)~17 (日)
販売時間:11:00~20:00
販売場所:都営新宿線 新宿三丁目駅【C1 出口前】
都営大江戸線 新宿西口駅【JR 新宿駅方面改札付近】
都営大江戸線 都庁前駅【A3 出口前】

販売個数:1500 セット
価格:2000 円(税込)

文=井土亜梨沙 写真=東京都交通局

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