例えば最近、ハワイ島を旅した友人女性がこんなことを言っていました。「私は日本にいる間、髪の毛のボリュームがとても多いのが嫌だったんです。扱いにくくてコンプレックスでした。だけど、ハワイを歩いていると、ロコの女性はボリュームの多い髪を広げ、自慢げに歩いていて、すごく美しく見えた。初めて生まれ持った髪質を、いいものだと思えたんです」と話していました。
彼女はハワイにいる間、初めて長い髪を下ろして街を歩いたのだそうです。日本にいるときは人目が気になっていたのに、ハワイでは胸をはって歩くことができた。この体験が、自分の外見に対する思い込みが、環境による刷り込みだったことに気づくきっかけになったそうです。
転職で「評価軸」を変えてみる
クラシコム代表の青木耕平さんは、「転職とはこれまでの自分に対して客観的になることである」と言っています。
これは僕自身もよく経験しているのですが、会社とは、どんなに多様性に富んだ人材を揃えた場所であっても、一つの理念に向かう組織である以上、似たような考えに偏りやすい場所でもあります。転職をすることで、新しい会社の価値観の中で働くうちに、これまでの自分の働き方やアイデアを客観的に見られるようになるのです。
「自分だけの評価軸」とは、簡単にいえば自分が心から好きになれるもの、どうしても嫌いなものなどのことです。しかし、すでに長い間、外側にある評価軸の中で生きてきた大人が、新たに「自分だけの評価軸」を見つけていくことは簡単ではありません。まず自身と渾然一体となった「外側にある評価軸」を、環境を変え、あえて複数の評価軸に晒してベリベリ剥がしてく時間と作業が必要なのです。
今後、「外側からの評価軸」に自覚的になり、自分だけの評価軸を育んでいく人々の取り組みが、さらに加速していくのだと思いますし、これらの取り組みをサポートする本や言論がさらに増えていくだろうと思います。
大事なのは、この取り組みは段階的に行うべきものであり、一足飛びにやることではないということです。例えば、前後を考えずに勢いで転職をするとか、いきなり会社をやめて遠くを旅してみるとか、そういうことを提案しているのではありません。「外側からの評価軸」に対し、自覚的になるとは、つまり角度を変えて見てみようということです。
これらの流れの一環として、本連載でも、尾原なりの角度からのご提案をしていこうと思います。
連載 : 働き方革命最前線─ポストAI時代のワークスタイル
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