また、スタートアップがサンフランシスコでどんどん生まれるようになってきたら、今度は大きな会社もサウスからやってくるようになりました。例えば「Google」は、10年ほど前にサンフランシスコに巨大なオフィスを作りましたよね。なぜかというと、今は従業員がサウスよりもサンフランシスコに住みたがるからです。
新しいサービスのスタートアップがサンフランシスコ近辺で多く生まれるというのは、新しいものを作り出すエンジニアやマーケターが、よりカルチャーやファッション、おしゃれなお店の多いサンフランシスコに住みたがるという背景があるから。会社の方が人について移動していくって面白いですよね。
象徴的に言えば、サンフランシスコ市内に住むようになったグーグラーは、週に3日サンフランシスコのオフィスで働き、週に2日は1日何十便も出ている無料のシャトルバスにのって、マウンテンビュー本社にミーティングのために行くというような働き方をしています。グーグルだけでなくAppleやGenentech行きの無料バスを朝のサンフランシスコではたくさん見かけます。
2016年、サンフランシスコのアパートの家賃はニューヨークのマンハッタンを抜き、全米一高くなった理由もおわかりになるかと思います。
新しいムーブメントの多くはサンフランシスコ周辺で起きています。まだ昔のイメージのままの理解をしている日本の方には、いまどきの「シリコンバレー」は場所も中身もこんなに変わったんですよ、ともっと伝えたいなと思っています。
ほかむら・ひとし◎ベイン & カンパニー、アップル社を経て、スイスの国際経営大学院(IMD)でMBAを取得。2000年、シリコンバレーにてGeneric Mediaを共同創業、近年まではエバーノートジャパン会長を務めた。現在サンフランシスコにてアーリーステージベンチャーへの投資に特化する「スクラムベンチャーズ」のパートナー。総務省「異能ベーション」プログラムアドバイザー、岡山大学起業家プログラムのエグゼクティブアドバイザーなど複数の肩書きを持つ。