さらにフィンランドでは「仕事を通して学習する」という考えが一般的で、結果よりもプロセスをとても大事にしています。現地で子育ても経験したラクソ美奈子(フィンランド在住20年)さんによると、その考え方は教育と関係があるようです。
「フィンランドでは、暗記や反復といった学びは少なく、小学生の頃からパワーポイントを用いたプレゼンをし、良い点や悪い点のフィードバックを得ながら自ら思考力や発想力を高めていきます。こうしたプロセス重視の学びは、共創をベースとしたエコシステムで、とてもアドバンテージがあると考えられます」
日本にも、大企業と大学研究所や地域が組んだエコシステムは存在していますが、フィランドでより効果的に機能しているのは、独自の価値観や教育に支えられている部分が大きいようです。
オープンイノベーションの価値を見出したい日本企業
2018年12月、ヘルシンキで開催された本家Slushには、130カ国以上から3100人を超える新興企業、1800人の投資家、650人のジャーナリストが集まり、運営メンバーの学生も自信に満ちた言動でイベントを盛り上げていました。ピッチングコンテストでは、エスポーのスタートアップ「ミースカン(Meeshkan)」が優勝し、同市のエコシステムの実力をさらに世界に知らしめる結果となりました。
「Slush」はNPOのため、利益至上主義ではなく多くの学生ボランティアで運営されています。
日本からも、一般個人、ジャーナリスト、スタートアップ企業の出展など、年を重ねるにつれて参加者は増えています。また、現地の優秀なスタートアップや教育機関と連携しながら、同市のエコシステムに積極的に参加していこうという日本企業の動きも活発化しています。これらのニーズに応えるために設立された完全招待制のサイドイベント「Knights of #slush 2018」では、Forbes Global 2000にランクインする日系大手企業も顔を連ねていました。
フィンランドは今後、投資先としてだけではなく世界のイノベーションリーダーとして更に注目され、この国から様々なゲームチャンジャーが生まれることでしょう。日本の企業もそのエコシステムと連携しながら、シリコンバレーやイスラエルなどとはまた違ったイノベーションの地平を開ければ、世界でも独自の存在感を放っていけるでしょう。
連載:クリエイティブなライフスタイルの「種」
過去記事はこちら>>