ビジネス

2019.03.13

フィンランドのビジネスの起爆剤 エスポー市のエコシステムの実力


企業×学生のプロジェクトも充実

Espoo Innovation Gardenの中でも重要なのが、120社以上のスタートアップと国連イノベーションテクノロジーラボ、欧州宇宙機関ビジネスインキュベーションセンターなどからなるスタートアップコミュニティ「A-Grid」の存在。アールト大学の施設に入居しているこのコミュニティには、コワーキングスペースや工房、ラボなどが完備されているほか、有能な卒業生や元ノキア社員などの人的ネットワークも充実しており、スタートアップのハブ的な役割を果たしています。

 
イベントスペース、カフェスペースのほかに、コワーキングスペース、メーカーズスペースなどが完備されている「A-Grid」。(Martin Sommerschield / Mikko Raskinen / Aki Rask 提供 : Aalto University)

他にも大学の敷地内には、「Aalto Design Factory(ADF)」という学生のためのクリエィティブスペースがあり、クリエィティブ人材の育成を目的とした企業協働プログラム「PDP(Product Development Project)」なども行われています。こうして官民学が一体となるエコシステム「Espoo Innovation Garden」から、毎年さまざまなスタートアップが生まれているのです。


3Dプリンタをはじめ様々な商品プロトタイプを制作できる環境が揃っている「Aalto Design Factory」。

秀逸な仕組みを支える価値観「タルコ」

これらのエコシステムの原動力になっているのが、「タルコ」というフィンランド人特有の価値観。ボランティア精神に似たこの言葉は、「みんなが抱えている問題を、みんなで解決して行動をしよう」という意味を持っています。

実際にスタートアップコミュニティの代表からボランティアまで、さまざまな方にお話を聞きましたが、「我々はタルコという考え方のもとで活動している」とみんなが口を揃えて言っているのが印象的でした。自分の属する組織の利益だけでなく、「自分たちが社会にどのように貢献できるか」という視点を、みんなが常に持ち合わせているのです。
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文=酒井新悟 取材協力=エスポー市・エスポーマーケティング社・アールト大学

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