平井大臣が語る、いま内閣府が「オープンイノベーション大賞」を主催する意味

(左)Forbes JAPAN副編集長 谷本有香(右)内閣府IT・科学技術担当大臣 平井卓也

内閣府は2019年3月5日、「第1回 日本オープンイノベーション大賞」の表彰式を行なった。

作家・池井戸潤やIDEO共同経営者トム・ケリー、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄、東京大学教授の各務茂夫らが選考委員を務め選出した内閣総理大臣賞をはじめ、各省大臣賞・団体会長賞の合計14プロジェクトが受賞した。

内閣総理大臣賞は、青森のビッグデータプロジェクト

内閣総理大臣賞を受賞したのは、弘前大学やマルマンコンピュータサービス、花王などが取り組む「超多項目健康ビッグデータで『寿命革命』を実現する健康未来イノベーションプロジェクト」。「日本一平均寿命が短い県」だった青森県を舞台に、弘前大学やマルマンコンピュータサービス、花王がその汚名を返上すべく2005年から開始されたプロジェクトだ。

県の全面支援のもとで健康診断を行い、そのデータを弘前大学医学研究科特任教授の中路重之らが分析。地元IT企業のマルマンコンピュータがプロジェクトを統括した。

選考委員の一人である早稲田大学大学院准教授の入山章栄は、「IoTやビッグデータという言葉がない時代から同じ目標のもと協力し、データを蓄積してきた。それが現代のテクノロジーや問題意識と結びつき、結果を出した」と語り、企業や大学、自治体に加えて県民も一体となって成果を挙げていることを評価した。

また、多くの企業が直面するAI時代の課題に応えていることも注目された。

「プライバシー保護が重視される現代では、特にライフログなどの健康を扱うビッグデータを入手・活用するのは簡単ではありません。これからビッグデータを活用する多くの組織のモデルになるはずです」(東京理科大学 特任副学長・向井千秋)



Forbes JAPANでは今回、内閣府IT・科学技術担当大臣の平井卓也氏、日本オープンイノベーション大賞の選考委員会委員を務めたForbes JAPAN副編集長・谷本有香によるオープンイノベーションをテーマにした特別対談を実施。

受賞プロジェクトの評価や、日本でのオープンイノベーション拡大の道筋などが語られた。

谷本有香(以下、谷本):日本では言葉こそ普及したものの、実際には「イノベーション」はあまり生まれていない印象があります。現状をどのように認識されていますか。その中で、「日本オープンイノベーション大賞」を開催された背景を教えてください。
 
平井卓也(以下、平井):日本は、イノベーション・エコシステムが他国に比べてまだ弱い。米国・シリコンバレーや中国・深センを定点観測しているが、そこでは半年〜1年スパンで大きく変化するダイナミズムがある。

一方で、若者のマインドセットが変わり、有名大学を出て大企業に就職することが正解だと考える人が減っているように思う。デジタルトランスフォーメーションが起き、日本という課題先進国の中で、力を発揮したいという人が増えているようで心強い。

オープンイノベーションについては進んでいるが、日本では、組織の壁を超えるのが難しい。デジタル化、グローバル化が進む中で、何もかもが繋がる可能性があると思考しなければならない。異分野との融合で新しいものが生まれる──。突き詰めれば、イノベーションは「領域を超えた、新しい融合」。それらを促すプラットフォームが、今の日本には弱い。

そうした背景がある中で、「組織の壁を超えて連携する」取り組みを評価することで、世界的に様々な組織で起こっている「サイロ化」を壊していきたい。

※日本オープンイノベーション大賞
・オープンイノベーションの先導的で社会インパクトのある取り組みを表彰し、ロールモデルとして発信。
・従前の産学官連携功労者表彰を衣替えし、科学技術・イノベーションの社会実装の取り組みとしてオープンイノベーションの手法を効果的に実施する企業・団体・大学等を表彰する。
・表彰対象分野ごとに、企業、団体・大学等に幅広くオープンイノベーションの取り組みを募集。外部有識者による審査を実施し、大臣賞等を決定。
次ページ > 「高齢化」を生かしたプロジェクトも

構成=野口直希 写真=若原端昌

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事