平井大臣が語る、いま内閣府が「オープンイノベーション大賞」を主催する意味

(左)Forbes JAPAN副編集長 谷本有香(右)内閣府IT・科学技術担当大臣 平井卓也


平井:リスクや失敗をもっと前向きに捉える必要がある。その理由を成果物として次の機会に生かすことができる。さらに、勝率を上げるためには、技術の素晴らしさに加え、経営に関わる人材が必要だ。

東大を始め、技術オリエンテッドで企業を立ち上げた起業家の成功事例がある。さらに、挑戦と失敗が当たり前になるよう社会のマインドセットを変えるべきだ。
 
谷本:第3次ベンチャーブームと呼ばれて久しいですが、どうすれば持続的なエコシステムにできるのでしょうか?
 
平井:一つは、大学を基点にすることだ。大学とCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)との連携も進んでいる。また、イノベーションは東京でしか起きないと考えられがちだが、地方にいる経営者や事業承継型スタートアップも重要なファクターとなる。そういう意味では、地方大学にはイノベーションを牽引することで地方創生の中核になってほしい。

前提条件が大きく変わるこれからの時代には、以前のやり方は通用しない。いままでは現行法を状況に合わせてアップデートしてきたが、これからはたくさんの人が生きがいをもてる社会がどんなものかを想像し、そこから逆算してルールを整備しなければならない。行政手続きの100%デジタル化など、当たり前の制度を早めに整備して、若い人たちが舵を取りやすくしたい。

谷本:そのようなオープンイノベーション国家になったと国民が変わったと実感できるのは何年頃なのでしょうか。

平井:2025年に大阪万博を開催できるのはとても大きなことだ。これが世界に対して日本の次なる社会を示すショーケースになるはず。それまでの色々な実証を行う段階からイノベーションを加速し、万博の頃には社会全体に普及する段階になっている。そうなると国民も変化を実感するのではないか。

そのほか各受賞企業は、以下の通り(賞名/プロジェクト関係企業・団体/概要)。

科学技術政策担当大臣賞

●ミツバチプロダクツ、パナソニックなど
「お蔵入り」するはずだったスチーム技術を独立させたホットチョコレート調理マシン製造のスタートアップ「ミツバチプロダクツ」。

総務大臣賞

●東北大学、RTi-castなど
東北大学の地球物理学や津波工学の研究者と地震情報処理を手がける企業が開発した、10分以内の津波発生や浸水を予測する「リアルタイム津波浸水被害予測システム」。

文部科学大臣賞

●大阪大学、大塚製薬など
大塚製薬やダイキンと、大阪大学との包括的な産学連携。基礎研究段階から応用研究段階まで資金提供するほどの密な連携が評価された。

厚生労働大臣賞

●東京女子医科大学、デンソーなど
東京女子医科大学とデンソー、日立製作所などによる手術室の医療機器のシームレスに連動させる「スマート治療室」。

農林水産大臣賞

●食の安全分析センター、宮崎大学など
宮崎の総合農業試験場や宮崎大学が連携し、残留農薬などを素早く調べる「食の安全分析センター」。

経済産業大臣賞

●東日本旅客鉄道など
JR東日本が鉄道や駅ナカの活用法を広く募集したスタートアップとの共創プログラム。

国土交通大臣賞

●東北大学など
すでに山形県などに導入されている、東北大学主導のインフラ整備を一元化するマネジメント・プラットフォーム。

環境大臣賞

●国立環境研究所地球環境研究センター、日本航空など
JAL財団の呼びかけで環境研や気象研が集まってつくられた、史上初の旅客機で大気中の温室効果ガス量などを計測する取り組み。

日本経済団体連合会会長賞

●ONE JAPANなど
やる気のある大企業若手社員をつなぐ場として、50社170名以上を集めた「ONE JAPAN」。

日本学術会議会長賞

●日本再生医療学会など
日本再生医療学会を中心に形成された、組織の垣根を超えて国家規模で再生医療の知識を共有するプラットフォーム。

選考委員会特別賞

●ローンディールなど
「レンタル移籍」による人材育成とイノベーションのエコシステム構築

●農業・食品産業技術総合研究機構など
遺伝子組換えカイコによる新産業創出プラットフォームの構築

●ジーシーなど
骨置換型人工骨「サイトランス グラニュール」の開発と実用化

構成=野口直希 写真=若原端昌

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